全国人民代表大会(全人代)の政策期待あるも、株価は調整気味
2024年9月30日~11月4日までの中国株の騰落率は、上海総合指数は-0.8%、香港ハンセン指数は-2.7%と、調整基調となっています。中国政府が景気刺激策を打ち出した9月24日以降に急騰しましたが、その急騰が一旦落ち着き、調整しているところです。
市場では11月8日まで開かれる全国人民代表大会(全人代)で10兆元以上の追加の景気刺激策が出ることが期待されています。全人代では地方政府の隠れ債務の交換のため、債務上限を引き上げる議案を審議したと、国営新華社より伝えられています。11月12日(火)には中国財政部が記者会見を開く予定で、そこで具体的な施策が発表される見込みです。ただ、仮に全人代で財政支出の増額が決議されたとしても、具体的にどのような政策になるかの詳細が明らかになるのはまだ時間がかかるとの見方もあります。
また米国の大統領選挙後に、米国が中国の輸出品に更なる関税を課すようになるかどうかも重要な問題で、もしも追加関税が課された場合、景気を支えるために財政支出が拡大される可能性もあります。
いずれにしても中国株は長期的には政策期待で更に上昇していく可能性があるとしても、目先は政策待ちで様子見基調が続く可能性が強いと思われます。
一方、ここまで積極的な財政投資拡大を中国政府が検討しているのは、過去数年にはみられなかったことで、期待感が高まり、市場はある程度の景気刺激策が発表されるものとして株価に織り込んでいると言えます。
しかし、市場の予想を下回る規模の景気刺激策しか発表されなかった場合や、米国の大統領選挙後に追加関税が課され、それでも景気刺激策が拡大されなかった場合には、市場は既にある程度の景気刺激策への期待感を株価に織り込んでいることもあり、下落する可能性もあります。
中国人民銀行が自社株買い向け融資プログラムを開始
この1ヶ月で一番大きなニュースが出たのは10月18日でした。まず、この日は習近平国家主席が「科学技術は中国現代化の最前線に位置すべきである」と発言しました。この発言によって、この日中国本土では、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC)やソフトウェアメーカーの中科寒武紀科技が20%上昇するなどITハイテク企業が大きく上昇しました。
さらに同日、中国人民銀行(中央銀行)は上場企業や大株主に自社株買い資金を融資する再貸し付けファシリティーを開始すると発表。中国人民銀行は同プログラムを通じて適格企業や株主に貸し出す21の金融機関に3000億元(約6兆3000億円)の低利資金を供給します。この件について、まだ株価はそれほど大きく反応していないのですが、自社株買いは長期的に大きく株価を引き上げること、中国当局がその点を踏まえて自社株買いを拡大しようとしていることから、長期的に株式市場にとって大きなプラスになると思います。
最後に足元の経済指標を確認すると、まちまちの状況です。10月14日に発表された9月の輸出は前年比2.4%増と市場予想の6.0%増や前月実績の8.7%増を下回るものでした。10月18日に発表された9月の鉱工業生産は前年比5.4%増と市場予想の4.6%増や前月実績の4.5%増を上回り、小売売上高も3.2%増と市場予想の2.5%増や前月実績の2.1%増を上回り、固定資産投資についても3.4%増と市場予想の3.3%増を上回りました(前月実績は3.4%増)。
また、10月31日に発表された10月の中国国家製造業PMIは50.1と市場予想の49.9や前月実績の49.8を上回りました。11月1日に発表されたCaixin中国製造業PMIも50.3と市場予想の49.7や前月実績の49.3を上回りました。ただ、中国国家非製造業PMIは50.2と市場予想の50.3をやや下回っています(前月実績は50.0)。
このように中国の実体経済は低空飛行を続けているような形で、こちらの面でも追加の景気刺激策が待たれるところです。