株式も為替(各クロス円)もこの1ヶ月のチャートを見ると、相似形、かつ驚くほどの角度で、急降下しています。
そもそも日本の株式も売られているのに、為替では円買いが進んでいるという状況は、2005年に日本株は上昇していたにもかかわらず、円安が続いていたときと同じく、株式の値動きと為替の値動きの逆行が見えます。
市場が複雑に入り組んできていて、様々な要因が交差しているためにこうした事象が起こっているといえるでしょう。
●日本株は米国株の流れに強く影響を受ける双子相場となっている(株安)●相対的に安心度が高いと思われる円が買われている(円高)
●円高が進むと輸出企業中心の日本企業への打撃が懸念され株安が進む
●先進各国の利下げに伴い日本との金利差が縮小、円キャリーの解消が進み円 高になっている
●急激な株安、円高に伴うストップロスが相場を加速させている
先進国特有の複雑な要因と、異常に低いままに推移した日本の金利は、
景気の強い国は株式も強い → 景気の強い国の通貨が買われる → 海外の資金が株式市場の流入する
といった教科書的な流れからは乖離するようになってしまっています。
市場の値動きはどんな専門家にも、完全に予測することなど不可能です。プロと呼ばれる人も皆、市場の値動きを後から見直して、ここはこういう理由で下落した、こういう理由で買いが入ったと分析し、確認作業をしているわけです。
最近のように複雑に入り組んだ要因によって動く相場では、要因とされている事象も人によって異なるものを挙げていることが考えられますし、そうした分析をもとにした予測は全く異なる様相を持っている可能性もあります。
教科書どおりに行かなくなり、解釈は様々な市場ですが、それでも「歴史は繰り返す」と言えるような動きが見られることも多く、そういう意味からも専門家による多種多様なコメントや見方は「参考」にはなるはずです。
個人が相場を見ていくときに、自分が保有している資産に関連した相場の流れだけを見てしまいがちです。様々な要因、様々な市場との関連性は決して無視できないものなのですが、あまりに広範に渡っており、かつグローバル化しているため個人で全てをフォローすることはとても無理と言えるでしょう。
そうしたときこそ、専門家の発信するさまざまな見方を「参考」にして、相場観を養い、投資の知識を深めるようにしていくことは、長い目で見て大変プラスになることと言えるでしょう。ただ、上記にあるように、今のような複雑な市場では「絶対」が存在しません。必ず複数の見方・コメントを参考にすることをおススメします。
たとえ、信頼できる専門家であると思われる人に出会ったとしても、ただ一人の言動に妄信的に追随することは、自分自身の視界も狭めてしまうことになりかねません。
投資の結果は、全て自分にかえってきます。自分の判断を後悔しないためにも、投資を行う際には商品内容はもちろんのこと、そのときの状況や相場などにもしっかりと理解を深めるようにしていきたいものですね。
廣澤 知子
マネックス証券
シニア・フィナンシャル・アドバイザー