年明けの中国株ですが、中国本土は軟調な地合が続く中、香港市場は米国株の堅調な値動きに牽引される形で底堅い値動きとなっています。中国本土の値動きが弱い理由の1つに旧正月前の換金売りがあります。2012年の旧正月は1月23日から始まりますが、例年、旧正月前は旧正月の資金需要のための換金圧力が高まる時期であり、売りが先行やすくなります。また、本土市場では複数の企業の新規株式公開が控えていることによる需給悪化懸念もあります。いずれにせよ、短期的な本土の市況が回復するのは旧正月明け以降となる可能性があります。
さて、2012年に入り各証券各社は2012年の相場見通しを発表しています。世界景気が不透明となる中で、証券会社の予想も慎重です。欧州のソブリン問題がこれ以上悪化しな いとの前提をつけている見通しが多く、上半期は株価が下がるという予想が多くを占めています。他方、下半期は中国の金融政策が転換することもあり、年末時点では年初よりも株価は上昇しているという予想が多くなっています。国際大手7社の証券会社の予測をまとめてみると、2012年の香港ハンセン指数は2011年度末から13.9%~19.3%上昇する見通しの21000~22000ポイントと予想されています。
セクター別では、内需、IT、電信に強気の見込みが多く、個別銘柄では中国携帯電話キャリア最大手の中国移動(00941)、iPhoneを展開する携帯電話キャリア2位の中国聯通(00762)、中国検索最大手の百度(BIDU)、大手通信設備メーカーの中興通信(00763)といったところがあげられています。安定した収益と潤沢なキャッシュフローが評価されているようです。内需では中国のトイレタリー製品最大手の恒安国際(1044)などがあげられています。一方、金融、不動産、海運などは弱気の見込みが多くなっています。
中国政府の金融政策は緩和方向に転じているものの、積極的な景気拡大策が打ち出せるようになるまでにはまだ時間がかかりそうですし、世界的な景気見通しはそれ以上に厳しいものになりそうだからです。ちなみに2011年12月の中国100都市における住宅価格は前月比ベースで60都市の価格が下落(11月は57都市)、37都市で上昇(11月は43都市)となっており、100都市では-0.26%で4ヶ月連続の下落となっており、不動産価格の下落スピードに拍車がかかりつつあります。不動産セクターは当面苦しい状況に立たされるのではないかと思われます。
他方、短期的な取引材料を見ると、2012年初から旧正月(1月23日~)前後まで、「1号文書」の発表期待で農業株が上昇する可能性があります。1号文書とは中国政府が毎年年初に発表する最初の政策のことで、1号文書が触れる分野は、その1年、中国政府が最も重視する産業分野だと言われています。ちなみに2011年は「水」関連産業でした。2012年の1号文書は三農問題(農業、農村、農民の問題)に焦点が当たるものと見られており、農業関連株が短期的に注目される可能性があります。