マイホームを購入しようと検討するときに最も重要なのが予算です。住宅購入は多くの人が何度も経験することではなく、人生の中でも1、2位を争う大きな支出のため、どこまでお金をかけるか悩むことも多いかもしれません。一度購入してしまうと後から変更が難しく、十分な計画を立てないまま身の丈を超えた住宅計画を立ててしまうと、教育費や老後費用などにも大きな影響を及ぼしかねません。

今回は、住宅の資金計画を立てるときのポイントをおさえていきましょう。

住宅ローン、借りられる額と返済できる額は違う

住宅資金の借入額を計算するときによく「年収の〇倍まで」などという目安を見たことはないでしょうか。金融機関では無理な借り入れを防ぐために、借り入れの返済負担率は年収の35%以内などの基準が設けられています(この際の「借り入れ」は住宅ローン以外の自動車ローンや奨学金なども含みます)。

このように、年収から借り入れ目安額を計算する方法もありますが、実はこのやり方は少し危険です。なぜなら、年収が同じならどのご家庭でも同じように住宅費用をかけられるわけではないからです。

もちろん借入金額を増やすことができれば購入の予算を増やすこともでき、より選択肢の多い住宅購入が可能になりますが、それと引き換えに住宅費用以外に使えるお金が減ってしまいます。

金融機関や住宅販売会社で提示される金額は、あくまで「借りられる可能性が高い額」であって、個々のライフプランを踏まえたうえで「無理なく返済できる額」ではないことに十分注意しましょう。

住宅ローンの返済額を計算する際の留意点

住宅ローンの返済額を試算するにあたっては、このようなことに留意するといいでしょう。

定年までに住宅ローン返済が完了しているように

35年返済など借入期間を長くすれば当然借りられる金額は増えますが、借りてしまったら返さなければいけません。

定年後に給料収入がなくなった後も同じように返済をしていくのは困難が伴うことがほとんどです。会社を辞めた後も収入が維持できるあてがないのなら、おおよそ定年までには返しきれるように計算しましょう。自営業などで定年などがない場合でも一生働き続けるわけにはいきませんから、まずは60歳や65歳を目安にするといいでしょう。

ボーナスに頼らない

ボーナスからの返済を組み込んだ借り入れも注意が必要です。給料と違ってボーナスは必ず出るものとは限りません。会社の業績不振によって先に減額されるのは給料よりボーナスです。ローンを借り入れしている何十年もの長い期間をずっとボーナスが安定して出続ける保証はありませんから、ボーナスがなくなったら返せなくなるような返済計画を組まないようにしましょう。

退職金をあてにしない

定年までに完済できない期間でローンを組み、定年時に残ったローンは退職金で返せばいいと安易に考えるのも危険が伴います。人生100年時代と言われるような長生き時代では、退職金は定年後の長い老後を支えるために重要な資金ですから、老後資金を計画しないまま住宅費用に使ってしまうのはお勧めできません。

また、ずっと同じ会社で働くばかりではなく、転職などがあれば退職金がなくなったり金額が減ったりすることもありえますから、不確定な要素の大きい退職金はあまりあてにしすぎないほうが良いでしょう。

住宅ローン以外の支出も考慮する

住宅を購入するときはローン以外の支出もよく考える必要があります。賃貸の家賃と同じ金額をローンの返済額として借りてしまうと、思った以上に住宅にかかる費用が大きく負担になることがあります。

ローン以外の支出は、購入時にかかるものとその後ずっとかかるものを分けて考えましょう。

購入時の費用

住宅購入時にかかる費用は「物件にかかる費用」「住宅ローンにかかる費用」「入居にかかる費用」の大きく分けて3つです。

物件にかかる費用

住宅購入の契約をするときの印紙税や仲介手数料、不動産取得税、登録免許税、登記に伴う司法書士への報酬などです。

住宅ローンにかかる費用

融資手数料やローン保証料、住宅を担保に入れる抵当権の設定のための印紙税や司法書士報酬などがあります。

入居にかかる費用

火災保険や地震保険、家具・家電、新居に合わせたカーテン、一戸建てなら家の周りの外構費用やなども必要です。転居に伴う引っ越し費用も、遠距離からであったり荷物が多かったりする場合には負担が大きくなることも考えられます。

購入時の費用は物件によってさまざまで一概にいくら用意すればいいというのが難しいものではありますが、一般的には5~10%はかかると考えましょう。諸費用を含めて借り入れることもできますが、諸費用を自己資金で用意できないうちの住宅購入は準備不足の可能性があります。資金計画に無理がないかよく確認を行いましょう。

継続的にかかる費用

購入時やローンを契約したときに一度だけ支払うもの以外に、住宅購入後ずっとかかり続ける費用もあります。

固定資産税

代表的な維持コストは固定資産税です。新築など一定の要件を満たすと当初3~5年は軽減の措置があります。数年経って急に金額が跳ね上がって驚くことの無いように減免の有無などをチェックするようにしましょう。

修繕費や管理費

修繕費や管理費も継続でかかっていくコストです。マンションの場合は毎月決められた金額を支払っていくことが多いですが、一戸建て住宅の場合は自ら準備していかなくてはいけません。家の規模が大きいとメンテナンスにかかる費用も高額になりがちですから、そのための積立額も含めて住宅費用のうちとして想定しておけるといいですね。

教育費・老後費用、頭金についても並行してプランニング

人生に必要な資金は住宅費用だけではありません。住宅購入の予算を考えるときは、ライフスタイルに合わせて必ず教育費や老後資金も並行して考えるようにしましょう。

例えば教育費を15年後に500万円準備するとしたら毎月約2.8万円を貯めていく必要があります。子供が2人いれば必要額も増えてきます。老後資金についても、公的年金で不足する部分や老後の特別費を加味したうえで計画的な準備が必要。基本的な生活費のほかにこれらの貯金をしたうえで、いくらぐらい住宅費用(ローン支払い・継続コストの支払い・修繕等積立)を負担できるかの計画が大事です。

手元の貯金を住宅購入の頭金として入れることで購入の予算を上げることはできますが、それによって教育費や老後のための貯金に影響が出てしまわないか注意しましょう。また万が一の時のために生活費の3ヶ月~6ヶ月分は生活防衛費として引き出しやすいところに準備しておくなど、無理のない資金計画を立てることをお勧めします。