住まいを購入する時は短期間のうちに家探しやローンの申し込み、火災保険に引っ越し準備と、お金のことをじっくり考える暇もない忙しさです。そのような中で忘れてはいけないのが税金のこと。住宅ならではの軽減税率など、知らないがために資金計画を間違ってしまったということがないように、住宅購入時の税金についてお伝えします。

住宅購入時にかかる税金

住宅の購入や建築時にかかる税金は以下の4つです。

(1)印紙税:売買契約・建築請負契約・ローンの契約時
(2)消費税:建物の購入価格か建築請負価格の額と仲介手数料
(3)登録免許税:所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記
(4)不動産取得税:土地建物の取得に対してかかる

(1)~(4)の税金についてもう少し詳しく見ていきましょう。

(1)印紙税
住宅購入時の売買契約書、建物を建築するときの建築請負契約書、住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)を交わすときに、契約の金額に応じた印紙を契約書に貼り、印紙税として支払います。

契約書の記載額による印紙税は以下の通りです。

【図表1】契約金額ごとの印紙税額
※( )の金額は2024年3月31日までの軽減措置
出所:筆者作成

契約書は売主と買主それぞれ1通ずつ作成しますが、印紙代は自分が保存する1通分を現金で支払うのが通例です。また最近では、住宅ローン契約が紙ではなくWEB上でできる電子契約サービスを取り入れている金融機関もあり、この場合収入印紙は不要となり、印紙税もかかりません。

(2)消費税
住宅購入時の消費税で主に負担が大きいのは、仲介手数料と購入する建物に対する消費税です。土地は消費税の課税対象外です。また、建物についても売主が個人の中古住宅を購入する場合は非課税となります。

売主が個人の中古住宅の場合、消費税はかかりませんが、住宅ローン減税の減税期間は新築住宅の13年間に対して10年間となります。また、中古住宅の年間最大減税額は一般住宅で14万円、認定住宅で21万円です。新築住宅の年間最大減税額は省エネ性能により21万円から35万円ですので、中古住宅を購入する人は住宅ローン減税にも注意しましょう。

【図表2】消費税額
出所:筆者作成

(3)登録免許税
登録免許税とは土地や建物を登記する際に支払う税金です。所有権にかかわる登記は、固定資産税の評価額に対して所定の税率を掛けて税額を求めます。新築住宅で固定資産税の評価額がない場合は、法務局所定の「新築建物価格認定基準表」を元に評価額を求めます。抵当権の設定登記は、住宅ローンの借入額に税率を掛けて税額を求めます。

【図表3】登録免許税軽減税率比較
2024年3月31日までに取得した場合(土地は2023年3月31日までに取得)
出所:筆者作成

税率の軽減を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

・自己居住用であること
・新築または取得後1年以内の登記であること
・床面積が50㎡以上であること
・市区町村が発行する住宅用家屋証明書を取得していること
・新耐震基準に適合した住宅であること
   登記上の建築日付が1982年1月1日以降であれば新耐震基準とみなされます。

2022年度の変更点として、中古住宅の築年数の基準がなくなりました。築年数が古い一戸建てやマンションでも、新耐震基準を満たした住宅であれば、軽減税率を適用できます。

軽減税率が使えない場合、例えば所有権移転登記の税率が0.3%から2%に上がってしまいます。契約金額が3,000万円だった場合、軽減税率が使えなければ登録免許税は9万円から60万円と51万円も上がってしまいます。特に単身者がマンションを購入する場合は、登記簿上の面積が50㎡以上かどうかを確認しておきましょう。

(4)不動産取得税
不動産取得税とは、相続以外の売買や贈与で土地や建物を取得したときにかかる地方税です。各都道府県によって異なりますが、不動産を取得した日から10~30日以内に各都道府県税事務所に申告、納税します。2024年3月31日までに土地や建物を取得したときは、土地と住宅用建物は評価額の3%、非住宅の建物は4%が課税されます。

また、住宅を取得したときは税金が軽減されます。詳細は各都道府県によって異なる部分もありますが、ここでは東京都を例に、新築住宅、中古住宅、住宅用の土地を取得したときの軽減制度について確認しておきます。

新築住宅(建物)

現況の床面積が50㎡以上240㎡以下の新築住宅では、建物の固定資産税評価額から1,200万円を差し引いた額に税金が課されます。

【図表4】
出所:筆者作成

認定長期優良住宅の場合は評価額から差し引ける額が1,300万円となります。

中古住宅(建物)

現況の床面積が50㎡以上240㎡以下で、1982年1月1日以降に新築された住宅は、新築された日により段階的に100万円から1,200万円の控除を受けることができます。また、1981年以前に建築された建物でも、新耐震基準に適合していることが証明された住宅は、新築と同じ控除を受けることができます。

例えば、1997年4月1日以降に新築された住宅であれば1,200万円、1989年4月1日以降1997年3月31日までに新築された住宅であれば1,000万円の控除が受けられます。

不動産取得税における現況床面積は、固定資産税評価証明書で確認できます。マンションの場合は登記簿上の床面積ではなく、共用部分も按分してプラスした面積となります。登記簿上の床面積が50㎡未満の場合は、軽減制度が使えるかどうかを一度確認しておくと安心でしょう。

住宅用の土地を取得したとき

2024年3月31日までに土地を取得して、3年以内に住宅を新築した場合、固定資産税評価額の1/2に対して3%が課税されます。さらにその税額から以下のア、イのいずれか高い額を差し引くことができます。

ア 45,000円
イ 土地1㎡の価格×床面積の2倍×持ち分×3%
         (200㎡を限度)

以下の事例で土地建物について不動産取得税がいくらかかるかを試算してみましょう。

【図表5】
出所:筆者作成

土地の取得税
当初税額:4,000万円×1/2×3%=60万円 (1)
イの控除額:4,000万円/100㎡×100㎡×2×1×3%=240万円  (2)
(1)-(2)<0 土地の税額は0

建物の取得税
(900万円-1,200万円)×3%<0万円
建物の税額は0万円

税率は3%と高くても、控除額が大きいため、不動産取得税はかかりません。

住宅購入時には必ず軽減税率が適用されるか確認を

住宅購入時には印紙税、消費税、登録免許税、不動産取得税の主に4つの税金がかかりますが、一定の要件を満たすと軽減税率が適用される場合があります。

特に自己資金が少ない場合、引渡し時や購入後に税金が払えなくなっては大変です。売買契約や請負契約前に必ず軽減税率が使えるかどうかを確認したうえで、購入時に必要な税金をざっくりとでも計算しておきましょう。そのうえで、心配であれば税理士や税務署に相談しておくことも大切です。

※2022年度税制改正大綱を元に執筆しています。