みなさん、こんにちは。日経平均株価は年明け後、一気に29,000円をうかがう水準まで駆け上がったものの、ここに来て足踏みとなっています。

これが上昇相場の日柄調整なのか、バブル的な要素が剥落する前兆なのかは、今後の相場展開を見通すうえで非常に重要なところだと思います。議論が分かれるところでしょうが、私個人的には足元の相場状況はどうも勢いが欠けてきたように感じています。

そもそもSDGsとは?ESGとの違いは?

さて、今回取り上げるテーマは「SDGs」です。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。2015年の国連サミットで採択された概念で、地球環境問題や人権・貧困・教育といった普遍的な問題の解決・緩和に取り組む目標です。

多くの政府や企業がこの考えに賛同し、SDGsの実現に向けて注力する姿勢を示しています。昨今、上記問題が世界的に深刻化していることを受け、政府や企業も社会的な責任を意識しなければならないという流れになってきているのです。

以前のコラムでも取り上げた通り、SDGsはESG(環境・社会・ガバナンス)とともに、株式市場においても注目度が急速に増していると言ってよいでしょう。ただし、ESGが投融資を考えるうえでの切り口になるのに対し、SDGsは国や企業自身が掲げる目標と言えます。

現在、SDGsへの取組みを(公式・非公式かかわらず)宣言する企業は着実に増えており、それらは非財務的な視点から企業価値を増大させる重要な取組みと位置づけられています。

しかし、SDGsに言及する企業の中には、「とりあえずSDGsに言及しておこう」という「なんちゃって」アプローチを採っているケースも少なくありません。これは、SDGsそのものが十分に理解されていないという問題があるためです。加えて、SDGsへの取組みが企業業績の拡大に直結するものとは言い難く、むしろコストアップになりかねない要素も多々あるためです。

企業におけるSDGs活動の重要なポイント

SDGsが漠然としたままで業績圧迫要因になるとすれば、企業としては本腰を入れ難いと考えるのも当然でしょう。また、SDGsへのアプローチには正解がなく、企業担当者が何をどこまでやればよいのかを模索しているという現実もあります。

そういった状況が、SDGs活動の啓蒙がこれだけ進んでいて、かつSDGsの概念に多くの人々が賛同するであろうにもかかわらず、依然として今一つSDGsが定着していない理由に挙げられると思います。

普遍的な問題を解決するというSDGs活動の企業における重要なポイントは、短期的な収益の極大化よりも、長期的な事業展開を可能とすることによる収益の最大化にあります。

SDGs活動は非財務項目の充実という捉え方もありますが、これも短期的な視点に過ぎません。貨幣経済下においては最終的にすべての価値は財務的に収斂するはずで、非財務項目も究極的にはそれが企業の利益という形で企業価値向上に貢献すると考えられるためです。

したがって、株式投資における銘柄選択においても、この点をどれだけ企業が意識できているかどうかが判断ポイントとなります。長期的には種々想定外のことが起こり得ますが、普遍的な課題というものはそうそう変わるものではありません。

企業のSDGs対応を見極めるヒント

SDGs活動を謳う企業の活動方針が本質をしっかり捉えたものになっているのかどうか、そしてそれがどのように企業収益の最大化に繋がるシナリオを想定しているかをしっかりと見極めていくことが重要でしょう。

とはいえ、多くの企業がホームページなどでSDGs対応を高らかにアピールしており、その内容もたいてい美しくまとめられているのが現状です。

一般の個人投資家がそういった情報を見て、その企業が「ことの本質を捉えているか」、「企業収益に繋がるシナリオを描けているか」を見極めるというのは至難の業と思えるかもしれません。このような疑問に対しては、次の3点を参考に考えていただければと思います。

まず、企業のホームページなどに記載されているSDGs活動方針の中で、「自社独自の内容」が含まれているかどうかに注目してください。往々にして美辞麗句で埋められており、非常に汎用的な文言となっているケースが少なくありません。

しかし、その企業の収益最大化を念頭に置いていれば、必ず「自社独自の内容」が盛り込まれるはずだと私は考えています。少なくとも、SDGsに対して現実的なかたちで取り組んでいる様子がうかがえると言えるでしょう。

2つ目は、「内容に具体性があるか」に注目してください。当然ですが、経営は抽象的な議論をいかに具体的に落とし込むかが問われるものです。具体性の提示は、それだけ社内で活発な議論が真剣に行われていることのバロメーターでもあると思います。

そして3つ目は、多くの企業のSDGs活動方針に目を通し、ご自身の見る目を養っておくことです。上記2つ目のポイントについても、理屈はわかっても、初見では実際のところ判断がつきにくいでしょう。いくつもの事例に目を通すことで、そのおおよその全体感を掴み、それと比較することでSDGsにしっかりと踏み込んでいる企業の目星がついてくると考えます。

是非、上記の観点で各企業のSDGs活動方針をご覧になってみてください。なお、この方法はSDGsに積極的な企業を洗い出すことには有効ですが、これらがないからといって「なんちゃって」企業だと断定することはできません。その点をご留意の上、参考にしていただければと思います。