みなさん、こんにちは。本日(12月30日)で2020年の国内株式市場は納会となります。新型コロナウイルスに振り回された2020年も終わり、新たな1年が始まろうとしています。ここは心も身体もしっかりとリセットして2021年に臨みたいところです。

株式相場は「掉尾の一振」という格言の通り、年末に向けて急伸し、27,500円越えという約30年ぶりの高値更新を実現することとなりました。

新型コロナウイルス感染拡大の第3波や変異種の出現、さらにはGoToトラベルキャンペーンの一時停止など経済面での懸念は依然として残っています。しかしながら、相場は新型コロナワクチン開発や米国での大型経済対策などを好感したというころなのでしょう。

ただし、前々回および前回コラムで「宴の後」について触れた通り、リスクシナリオについても今後是非、頭の片隅に残しておいていただければと思っています。

さて、今回は2020年最後のコラムということもあり、前回コラム「2021年注目すべきテーマ」で書ききれなかった1つのテーマを取り上げたいと思います。

このテーマは特にイベントが2021年にあるわけではありません。だからこそ前回コラムでは触れなかったのですが、筆者は2021年に留まらない息の長い相場テーマになる可能性が高いと考えています。

長期的に注目される「カーボンニュートラル」とは?

そのテーマは「カーボンニュートラル」です。カーボンニュートラルとは、「企業が排出する二酸化炭素などの温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)の排出量をネットでゼロとし、地球環境への影響をニュートラル(中立)にする」という概念です。地球温暖化の原因の1つと目されるGHGをこれ以上増やさない、という目論見です。

昨今は異常気象が頻発していますが、その一因が地球温暖化にあると考えられています。カーボンニュートラルの実現は異常気象による災害の発生増加を抑制するという、生産・消費活動を行う企業にとって重要な社会的使命として位置づけられつつあります。

なお、これまでGHG排出抑制については、「カーボン・オフセット」という考え方が広く用いられてきました。これは、GHG排出抑制に向けた努力をするものの、どうしても増加してしまうGHGについては排出権の取得などで埋め合わせて対応しようというものです。

当然、排出権を売った方はその分、GHGを排出できなくなるため、トータルでそれらが相殺され、GHGの排出量は排出権の範囲内に収まる、というアプローチです。しかし、このアプローチではGHGがやはり地球全体で増加してしまいかねないうえ、排出権取引に関してもその透明性に懸念がありました。

そうこうしているうちに異常気象の発生頻度が急増し、緊迫した状況になってしまったのです。カーボンニュートラルはそのような状況の中、「GHGの総量をこれ以上増やさない」という狙いのもとに提唱されているのです。

カーボンニュートラル実現への険しい道のり

しかし、カーボンニュートラルの実現はそんなに簡単ではありません。サービス業やIT企業ではGHG排出量がある程度の規模にとどまるとしても、他の業界でこれと同量のGHG削減を実現するのは単純に考えてもかなり困難だと思われます。

ましてや、生産活動においてどうしても大量のGHGを排出せざるを得ない大規模製造業などでは、カーボンニュートラルの実現にあたり、相当に高いハードルを越える必要があるでしょう。

そもそも地球温暖化防止への提言は30年前からなされていましたが、それに対する取組みは遅々としたものでした。経済合理性を満たした対策を講じることが難しいうえ、先進国と途上国間での意見対立、温暖化の原因や温暖化そのものに対する否定的な見方なども、非常に重い足枷となっていました。

徐々に逃げ場のない状況になってきたとは言え、これらの問題が重石となっている状況に変化はありません。現在はようやくカーボンニュートラルを2050年に実現するという目標が世界的に共有されつつあります。しかし、まだまだこの共同歩調にはガラス細工のような脆さがつきまとっているように感じます。

それでもカーボンニュートラルに向けたトレンドができつつあるのは、各国政府において異常気象災害に伴う復旧・対応コストが急増していることや、企業においてSDGs(持続可能な開発目標)の概念やESG投資の浸透がその背中を押しているためです。株式市場でもこのような社会的ニーズに裏打ちされた大きな流れは、長く注目されるテーマになることでしょう。

カーボンニュートラル実現への道のりは決して平坦ではありません。しかし、実現した暁には、圧倒的に先行する技術力と世論の支持が企業価値を高めることになるでしょう。どのような企業がカーボンニュートラルへの挑戦を始めているでしょうか。是非とも、こまめに確認していただきたいところです。

さて、皆さまにとって2020年はどのような1年でしたでしょうか。
良い新年をお迎えください。そして2021年は皆さまにとって、より良い1年となりますように。