みなさん、こんにちは。2020年も残り僅かとなってきました。この1年の相場を振り返ると、前半はコロナ禍が大きく株価に影響し、日経平均株価は16,000円台まで急落しました。しかし、その後は回復し、11月下旬から約29年半ぶりという27,000円に肉薄する水準での推移となっています。

高値/安値で見ると数値は実に1.65となり、かなり変動の大きな波乱相場であったことが確認できるでしょう。1年前のコラムで、「2020年は(それまでの膠着感・停滞感を経て)方向性が明確となる1年」と位置付けました。

結果的に、日経平均株価が高値を更新してきたことで、確かに方向性は明らかとなったものの、それはかなり過剰流動性による金融相場で形成された部分が大きく、1年前に想像していたものとは中身が異なる展開となりました。

2021年は「コロナ禍の総決算となる1年」

そこで2021年は「コロナ禍の総決算となる1年」と予想します。東京オリンピック・パラリンピックは、ウィズコロナ下での壮大な挑戦となるでしょうし、新型コロナワクチンによってコロナ克服となるかが試されることになるでしょう。

一方、リモートワークなど社会行動様式の変化がどのような形で定着するかも注目点になるでしょう。コロナ禍において促進された社会構造変化が「ニューノーマル(新常態)」として再出発する1年になると考えます。

2020年、相場に影響を与えたイベントは?

さて、今回は12月のコラムということでもあり、2015年から続けている「翌年の重大イベント」を取り上げたいと思います。1年前のコラムでは、米大統領選、未公開株市場の動向、5Gサービス、東京オリンピック・パラリンピック、の4つを2020年の注目テーマとして取り上げました。

しかし振り返ってみると、2020年の株式相場はコロナ禍の影響に翻弄されたように思います。

東京オリンピック・パラリンピックは延期となり、それが悪材料として関連企業の株価に影響を与えました。5Gは順調に立ち上がったものの、それに伴う需要の拡大よりも菅新政権が政策として掲げる「携帯電話料金の引き下げ」の方が株式市場にはインパクトがあったように思います。

未公開株市場も当初は懸念通りの展開となったものの、コロナ禍におけるDX化への期待拡大や過剰流動性の発生などを受け、従来通りの展開となっているように思えます。

注目された米大統領選は史上稀に見る混戦となりましたが、株式市場はそれ以上に新型コロナワクチンの動向に注目することとなりました。

一方、コロナ禍による社会行動様式の変化は否応なしに我々の働き方を変え、時間の過ごし方に対する意識も変えました。この新様式に対応する企業の株式が大相場を演じたことも忘れてはいけないでしょう。後から振り返ると、2020年は大きな社会構造のターニングポイントであったと定義づけられるのではないでしょうか。

2021年注目すべきテーマ

では2021年はどうでしょう。2021年の主なイベントを見ると、2月にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)内に世界初となる任天堂の世界観をテーマとした新エリアが開業し、7-8月は東京オリンピック・パラリンピック、秋までに衆院総選挙などが予定されています。

ただし、引き続きウィズコロナ下でもあり、概してイベント数は平常時より大幅に減少する見通しです。また、これら以外では2021年も自然災害への警戒を怠れないと考えています。

そういった中で、筆者が特に2021年に注目するテーマとして、「東京オリンピック・パラリンピック」、「衆院総選挙」、そして(これは筆者が漠然と感じているテーマなのですが)「宴の後」を挙げたいと思います。

(1)東京オリンピック・パラリンピック

東京オリンピック・パラリンピックは様々な理由を背景に、今回は決行される可能性が非常に高いと筆者は考えています。しかし、コロナ禍の影響で無観客、あるいは大幅に観客数を絞っての開催となる可能性も高いと感じています。

仮にそうなれば、経済効果はインバウンド需要を想定していた当初のシナリオとは大きく異なるものとなるでしょう。テレビ需要やオンデマンド視聴の増加といった、海外で行われるオリンピックと似たような経済インパクトになるのではと想像します。

(2)衆院総選挙

また、秋に任期満了を迎えるまでに、衆議院の総選挙があります。過去の事例から見れば「総選挙は買い」となりますが、今回はどうでしょうか。

コロナ禍によって働き方や時間の使い方に大幅な変化が生じていますが、新しい社会に政治がどう適応できるでしょうか。緊急対策として大胆な資金供給がなされましたが、その後の対応について財政規律をどう捉えるのかも次回の選挙での争点になるものと考えます。

(3)「宴の後」

そして筆者が注目しているのは「宴の後」です。前回コラムでも触れましたが、現在の株価にはかなりの期待が前倒しで織り込まれている可能性が高いと見ており、実体経済との乖離が広がっている印象が否めません。

12月13日付けの日本経済新聞の記事で、債務不履行が世界で倍増していると報じられていました。これは筆者の肌感覚では特に違和感がない内容で、これまで以上に資本市場と実態経済の乖離が広がっていることを確認できる報道でした。

今後もこのような傾向が続けば、遠からず「宴」は唐突に終了し、面倒な後片付けが発生することにもなりかねないでしょう。「宴の後」がやってくるというのは、実現してほしくないシナリオです。

しかし、2021年を読み解く上で、是非とも頭の隅に残しておいていただきたいキーワードであると考えます。