投機ポジションの主役が変わる
短期売買を行う投機筋の代表格であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC統計によると、日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルの主要5通貨で試算した投機筋の米ドル買い越しは、2024年4月末に38.8万枚と過去最大規模に拡大した。その後は縮小に向かい、一時は売り越しに転じたものの、最近にかけて買い越し再拡大となり、2024年12月31日時点では改めて30万枚の大台を回復するところとなった(図表1参照)。
経験的に、同買い越しの30万枚以上は「行き過ぎ」圏である。その意味では、最近にかけて米ドル「買われ過ぎ」懸念が再燃してきたと言えそうだ。ただし、その米ドル「買われ過ぎ」の中身は、2024年4月末と最近ではかなり異なっている。
2024年4月末の米ドル買い越しの主役は円売りだった
2024年4月末の米ドル買い越しの中心的対象は日本円。当時の対米ドルでの円売り越しは、ほぼ18万枚と過去最大規模に達し、米ドル買い越しの半分近くのウエイトを占めていた(図表1参照)。以上のように見ると、当時の「行き過ぎ」の主役は円売りであり、その影響により米ドルも「買われ過ぎ」になったのではないか。
今回は加ドルを中心に米ドル買いが拡大
一方、2024年12月31日時点の円の対米ドル売り越しは1万枚にも満たない。にもかかわらず、米ドル買い越しが再び30万枚の大台以上に拡大してきたのは、円以外の通貨に対する買い越しが軒並み拡大したことによる。その主役は加ドルで、2024年12月31日時点の米ドル買い越しに占める加ドル売り越しの割合は5割以上となり、米ドルに対する売り越しは18万枚程度と過去最大規模に達した(図表3参照)。
加ドルに次いで対米ドルでの売り越しが多かったのはユーロ。2024年4月末時点では小幅な売り越しに過ぎなかったユーロだが、2024年12月31日時点では7万枚程度まで売り越しが拡大した(図表4参照)。
先述のとおり、米ドル買い越しの30万枚以上は経験的には「行き過ぎ」圏である。ただし2024年4月末は、それは円「売られ過ぎ」の結果として起こったことで、主役は円の「売られ過ぎ」だった。これに対して最近は円以外の通貨、加ドルを中心に欧州通貨などに対して軒並み米ドル買いが拡大している。これは、関税などトランプ次期米大統領の経済政策がテーマとなり、米ドル「買われ過ぎ」が広がっているといえるのではないか。