日経平均は一進一退を繰り返しながら、じりじりと値を切り下げてきています。概して年収103万円の壁突破による実質減税期待が下値を支える一方、米次期政権の関税策や円高進行、国内では景気減速懸念や減税策骨抜き観測などが重石となっているところでしょうか。

米次期政権の輪郭が見えてくるにしたがい、保護貿易懸念や円高観測は今後さらに広がる可能性があります。国内では少数与党路線の不安定さがより顕著となり、意思決定の遅れに対して先行き不透明感も増すのではないかと懸念します。現在は狭い範囲のボックス圏推移となっていますが、ボックス圏の下限を維持できるかどうかがその後の相場展開のカギと位置付けます。

太陽光発電は頭打ちの状況?

さて、今回は「ペロブスカイト太陽電池」を取り上げてみましょう。これはペロブスカイトという結晶構造を用いた太陽電池の一種です。技術そのものは古くから知られていましたが、2023年に岸田首相(当時)が2030年までにこの技術を普及させるという方針を打ち出したことで、にわかに注目を集めたものです。軽量で折り曲げ可能な太陽電池と言えば、思い当たる方も多いのではないでしょうか。

ただし、株式市場における当時の注目度は高いとは言えず、テーマとしてもてはやされることはありませんでした。その理由は太陽光発電そのものが供給サイドからも需要サイドからも頭打ちの状況となりつつあるためです。

需要サイドからすれば、当時すでに再生可能エネルギーの出力抑制が求められるなど「発電し過ぎ」といった状況が発生し始めていました。この状況は現在も継続しており、再生可能エネルギーがベースロード電源として位置付けられない限り、再生可能エネルギーへの期待は一巡したと言えるのかもしれません。

供給サイドから見ても、外務省や資源エネルギー庁の調査によると、日本は平地面積当たりの太陽光発電容量は主要国で既に断トツの1位にあります(2位はドイツで日本の半分以下)。その一方で、今後の設置場所の確保については危ぶまれる状況にあります。これらを見ると、一時は注目を浴びた太陽光発電も、その期待度は大きく低下してしまったという構図が透けて見えてくるでしょう。

とはいえ、技術面でのブレイクスルーがあれば局面は大きく変わります。あまり注目されていない今こそ、こうした次世代技術をおさらいしてみるのが投資を考える上では肝心です。ブームが来てからでは出遅れてしまう可能性があり、また、よく理解できないままでは相場の降り時も間違えることになりますので、次世代太陽光発電に関する情報を整理しておきましょう。

ペロブスカイト太陽電池はなぜ次世代電池と位置付けられるのか

そもそもペロブスカイト太陽電池は既存の太陽電池と何が違うのでしょうか。決定的に違うのは、既存製品は発電層として多結晶シリコンを使用とするのに対し、ペロブスカイトという結晶構造を持つヨウ素化合物を発電層に用いる点です。

一般的に、発電層の優劣を決める要素は変換効率、生産コスト、性能寿命、廃棄コスト、重量、形状などがあります。現状、シリコン系は変換効率がおよそ20%、性能寿命は30~40年、重くパネル状にする必要があり、その廃棄については今後大きな問題になるという観測があります。

これに対しペロブスカイト太陽電池は、理論上はシリコン系と大差ない変換効率が期待でき、薄膜化できるため軽量で建物壁面や窓、IoTデバイスなどの小型機器に至る様々な形状の物体に塗布や印刷で対応可能という特性があります。使い勝手という点で従来のシリコン系電池とは大きく異なっているのです。

従来は無理であった壁面や屋根などからも発電が可能となれば、設置場所の問題もクリアとなり、発電機会の圧倒的な増加からベースロード電源の一翼を担える可能性も出てきます。もちろん、夜間の発電に課題は残りますが、ペロブスカイト太陽電池を次世代電池と位置付ける理由がここにあります。日本としては、世界第2位のヨウ素算出国であるという材料面でのアドバンテージを有している点も大きいと言えるでしょう。

実用化はまだ先…今から注目しておきたい企業

しかし、シリコン並みの変換効率はまだ実用レベルではない上、その性能寿命や生産コストという点ではクリアすべき問題も多く残されています。今後はこれらのブレイクスルーに注目することで、株式投資のタイミングを見極めていく、というのが「待ちの投資戦略」と言えるのかもしれません。

では、どのような企業が注目できるでしょうか。当然、新技術となるために思いもしなかった企業が突然浮上してくる可能性は十分あります。ここで紹介する企業のみが本命ではないと十分にご認識ください。

その上で、現時点でペロブスカイト太陽電池への注力を明らかにしている企業を挙げると、積水化学工業(4204)、パナソニック ホールディングス(6752)、日揮ホールディングス(1963)、カネカ(4118)、マクニカホールディングス(3132)、エヌ・ピー・シー(6255)、ホシデン(6804)など。ヨウ素関連では伊勢化学工業(4107)、K&Oエナジーグループ(1663)などになります。

ペロブスカイト太陽電池に関するニュースが出始めると、これらの企業への注目度合いは一つギアが上がってくるのではないかと考えます。

なお、この技術は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発表した日本発祥のものです。これまでの太陽光発電装置の概念を覆す画期的なものであり、こうした技術が世界に浸透すれば、ちょっと誇らしい気分にもなります。日本発祥の技術として、なんとか実用化が進んでほしいと願っています。