国策としてペロブスカイト太陽電池の普及を推進
薄くて曲げられる次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の量産化が現実味を帯びてきている。積水化学工業(4204)が2024年12月に量産に向けた新会社を日本政策投資銀行と設立すると発表している。
一方、経済産業省は2024年末に、2040年度の電源構成を定めた新たなエネルギー基本計画の原案をまとめた。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの比率を最大5割に高めるとし、その中でペロブスカイト太陽電池に注力することも明らかになった。具体的には2040年度のペロブスカイト太陽電池の導入目標を2000万キロワットとしており、これは家庭の使用電力の約1割を支える発電規模に相当する。ペロブスカイト太陽電池の普及は中長期的に国策になったといえ、量産化を後押しする。
薄くて軽量、曲げられるペロブスカイト太陽電池はさまざまな場所に設置可能
ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いて作られる太陽電池。ペロブスカイト膜は塗布(スピンコート)技術で容易に作ることができ、低価格で製造が可能で、フレキシブル(曲げられる)で軽量な太陽電池が実現できる。課題は変換効率の低さだったが、ここに来てこれが改善されつつあり、徐々に実用化の動きが出始めている。
薄いフィルム状で、重さが従来のシリコンに比べ10分の1程度と軽く、曲げられるため建物の壁や湾曲した屋根などにも設置できる。透明性も高く、ビルの窓側でも使用可能。雨天など弱い光でも発電でき、量産化に進めば製造コストも下げられるとみられている。
ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が開発し、毎年ノーベル賞候補に名前が挙がる。
主要原料のヨウ素埋蔵量は日本が世界首位
主要原料はヨウ素と鉛。伊勢化学工業(4107)の資料によれば、世界のヨウ素生産量は年間約3万4000トン。シェアはチリが6割と首位で、日本が3割。K&Oエナジーグループ(1663)の説明資料によれば、商業レベルでの日本のヨウ素埋蔵量は約8割を占め世界首位としている。なお、国内生産量の約8割は千葉県が占めている。
電気自動車(EV)では2次電池の原料であるリチウムなどを輸入に頼っているが、ヨウ素を自国で調達できるのは強みとなる。
調査会社の富士経済によれば、ペロブスカイト太陽電池の世界市場は2040年に2兆4000億円と、2023年比で65倍に拡大すると予想している。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄
関連銘柄をピックアップする。
積水化学工業(4204)
日本のトップランナー。政策投資銀行と新会社「積水ソーラーフィルム」を2025年1月に設立。2027年に10万キロワット、2030年までに年100万キロワット級と原発1基分に相当する発電量を目指す。政府の補助金も活用する。
同社のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の厚さは全体で1ミリメートルほど。厚みのほとんどはバックシートとバリア(保護)フィルムで、ペロブスカイトの発電層はわずか1ミクロン(1ミリメートルの1000分の1)だ。
伊勢化学工業(4107)
ヨウ素で国内首位。世界シェアは約15%。精製工程で不純物を除去して高純度のヨウ素製品を製造している。独自開発の球状ヨウ素「イセフロー」やヨウ素カリウムなどのヨウ素化合物も展開。
K&Oエナジーグループ(1663)
子会社のK&Oヨウ素がヨウ素の製造・販売を手掛けている。同社によるとヨウ素の世界生産量の約5%を手がけ、国内シェアは約15%としている。現在の主要用途はX線診断用造影剤。
パナソニック ホールディングス(6752)
2024年にペロブスカイト太陽電池の実用化予定を、当初の2028年から2026年に前倒しすると発表。自社開発の同電池と住宅の建材を組み合わせ「発電するガラス」としての用途を開拓するという。独自のインクジェット塗布製法と、レーザー加工技術を組み合わせることで、サイズ、透明度、デザインなどの自由度を高めることができるという。
MORESCO(5018)
独立系の化学メーカー。ペロブスカイト太陽電池の封止材で実用化を後押ししている。同電池は水分が付着すると発電性能が著しく劣化するため、封止材には非常に高い保護性能が求められる。中期経営計画では2026年度以降の製品供給を目指すとしている。
コスモエネルギーホールディングス(5021)
2024年7月に、積水化学工業などとフィルム型ペロブスカイト太陽電池をサービスステーション屋根および事業所のタンク壁面に設置するための共同実証実験を開始したと発表。実証期間は1年間を予定。実証で得られた結果を全国の耐荷重が少ない屋根や垂直曲面設備などへも展開することで、再生エネルギー導入の拡大とカーボンニュートラルへの貢献を目指す。