日経平均は一進一退の動きが続いています。一時は久々に4万円を越える局面もありましたが、すぐに売りに押されてしまいました。

国内は減税議論の行方が、国外ではトランプ新政権の経済政策や中国景気の動向が、それぞれ重石となってスッキリしない相場展開を余儀なくされているという印象です。今後、これらの重石が徐々に変化する、あるいはその実情がクリアになってくるにしたがい、相場には一定の方向感が出てくると予想しますが、そのタイミングまでにはもう少し時間がかかるのかもしれません。

これから年末に向けては「掉尾の一振(とうびのいっしん=株価が年末の大納会に向けて上昇するという相場格言)」に期待したいところですが、2024年は不安定要素が大きく、空振りになる可能性も否定できないと考えています。

2024年の注目イベントを振り返る

さて、今回は毎年恒例となった「翌年(今回は2025年)の重大イベント」を取り上げてみましょう。2023年末のコラムでは、「米大統領選」「自民党総裁選(+衆院総選挙)」「東証改革の加速」の3つを2024年の注目イベントと位置づけました。

日米の選挙の結果は奇しくも共にリーダーが交代するものとなり、現在のところ、今後の政治・経済に対して先行不透明感を台頭させるものとなっています。

東証改革は新たな指針が示されはしなかったものの、「資本コストと株価を意識した経営」は上場企業に急速に浸透し、同時に多くのアクティビストの存在感を高めることにも繋がりました。

日本を代表する小売企業セブン&アイ・ホールディングス(3382)に買収提案がされることや、与党が盤石の安定感を誇って憲政史上最長となった安倍政権からわずか4年で少数与党政権に転落するなど、果たして年初に誰が想像できたでしょうか。実に波乱に富んだ一年であったと受け止めています。

株価に目を転じてみると、日経平均は2月に35年ぶりの史上最高値を更新し、7月には42,426円という高値に至りました。2023年末のコラムでは「2024年は史上最高値を狙う一年」と位置付けましたが、あっという間の更新に言いようもない興奮を覚えたものでした。

相場格言では、2024年は辰年で「天井」でした。こちらもまさに格言通りの展開であったと言えるのかもしれません。

「2025年の崖」を超えられるか? 

それでは2025年はどうでしょうか。主なイベントとしては、1月にトランプ氏米大統領就任、4月に大阪万博開催(~10月)、7月に参議院選挙、9月に東京で世界陸上が予定されています。また、10月にはマイクロソフト[MSFT]Windows 10のサポートが終了、DX化待ったなしとされた「2025年の崖」が実際に訪れることになります。

時期は明示されていませんが、TSMC熊本工場の稼働開始、トヨタ自動車(7203)・デンソー(6902)・ソフトバンク(9434)・日本電信電話(NTT)(9432)・ソニーグループ(6758)・日本電気(NEC)(6701)・キオクシアホールディングス(285A)・富士通(6702)(予定)などが出資するラピダス北海道工場の建設終了も2025年と見込まれています。この2工場は半導体製造の国内回帰を象徴するものとなるでしょう。半導体関連の株価は2024年大きな調整局面となりましたが、2025年は一転して回復を織り込む大きなテーマになるのではないかと期待しています。

また、イベント関連で筆者が最も注目するのは参議院選挙です。政権選択選挙ではありませんが、現政権与党の信任が問われる重要な選挙となります。仮に与党が高い信任を得ることができず、衆参共に過半数割れとなれば政治は混乱を極めることにもなりかねません。現時点では全くの想像ですが、場合によっては再度衆議院の解散が断行され、衆参ダブル選挙となる可能性もあるのではとも考えています。

また、トランプ氏の大統領就任を契機とした世界の動きも要注目です。トランプ氏が終結に自信を見せるロシア・ウクライナ戦争はどうなるのか、中東紛争や台湾海峡リスクにどう対応するのかなど、対応次第で世界情勢が一気に変わる可能性は否めません。経済的なインパクトにおいても、仮に関税政策が本当に実施されることとなれば、米国景気に留まらず、中国など世界各国へ影響が伝播することになるでしょう。それらは為替にも大きく影響するはずです。国内政治の不安定さと相まって、2025年の経済情勢は予断を許さない一年になるのではないかと想像します。

2025年は、東証改革の効果がさらに表れる年に

株価市場に関しては、東証改革効果の顕在化がさらに進むと予想します。改革当初は「手温い」「骨抜き」といった批判もありましたが、種々の仕掛けが一定の猶予期間を経てついに結実してきたというところでしょう。

2025年はまず、明確となった上場基準をクリアできていない企業が選択を迫られることになります。東証の提示した特例猶予期間がタイムリミットとなるためです。基本的に基準未達で上場廃止(※)というのがルールですが、そうなる前に抵触企業はMBOや他社との合併、上場基準の低い地方取引所上場への鞍替えなどの対応を本格化することでしょう。

※経過措置終了後も基準を達成していない場合、原則1年間の改善期間が設けられ、改善期間内に基準が満たされなければ、監理銘柄・整理銘柄指定期間(原則として6ヶ月間)に指定され、上場廃止となります。

アクティビストの存在感はさらに高まると考えます。意識すべき資本コストをきちんと理解できている企業は実はそれほど多くありません(これに関しては、また別の機会に採り上げましょう)。そのような企業はアクティビストの介入余地が大きく、結果として大規模な事業再編や業界再編が迫られるというケースが増えてくるのではないでしょうか。当然ですが、これは日本経済や企業の効率性という観点では非常によいことでもあります。

2023年以降、株式市場は成長期待よりも改革期待が牽引となってきました(これはグロース市場とプライム市場のパフォーマンス差を見れば明らかです)。この流れは2025年もまだ継続するものと考えています。

なお、相場格言では2025年の巳年も天井です(辰巳天井)。2024年は実際に史上最高値更新となりましたが、格言にしたがえば、2025年も高値圏での推移が期待できるということになります。ぜひともそうなってほしいですね。

皆様、2025年もよろしくお願いいたします。それでは、よいお年を!