みなさん、こんにちは。日経平均株価は依然として約29年半ぶりとなる高値圏での推移となっています。直近はさすがに利食いも増えているようですが、相場の腰は強く、大きな調整には至っていません。

ここまでの株価上昇は、ひとえにコロナ禍での社会構造の変化と、それによる成長期待を積極的に織り込み始めたということだと受け止めています。ただ、その一方でこれだけの上昇に対して警戒感もまた否めない状況に至ってきたとも感じています。

今回のコラムでは、そういった警戒感の背景にあるものについて考えるべく、テーマとして「バブル崩壊」を取り上げたいと思います。

歴史的に見ても株価の上昇ピッチは特筆すべき状況

昨今の株価の勢いは周知の通りです。11月24日には、NYダウ平均株価が史上初めて3万ドルを突破しました。日経平均株価も27,000円に肉薄する勢いにあり、コロナショックで16,300円まで調整が入った3月中旬との比較では優に6割を超える上昇率となっています。

直近1ヶ月でみても上昇率は15%程度と、凄まじいとも言える上昇ピッチにあります。ちなみにこの上昇ピッチは、アベノミクス相場への期待から16連騰を達成した2017年10月の上昇率をも上回るものであり、実に1995年7月以来の水準になります。

歴史的に見ても株価の上昇ピッチは特筆すべき状況にあると言っても過言ではないと考えています。

期待の織り込み方と現実の間に広がるギャップ

一方で、現状の株価を正当化するファンダメンタルズの裏付けは決して盤石なものとは思えません。アベノミクス相場の急騰局面では、大胆な金融政策の変更を含む「3本の矢」政策があり、有効求人倍率の急上昇など実体経済の好調を示すデータが次々と出てきていました。

消費税増税の是非やどれだけ実感を伴った好景気であったかは議論が分かれるところでしょうが、脱デフレに向けての進捗が株価を牽引したことは紛れもない事実でしょう。

しかし、現在はコロナ禍の影響が依然として残ったままの状況です。春先のパニック的な状況からは確かに回復基調にあると言えますが、コロナ以前の水準を超えるほどに事業構造の転換を実現できた企業はまだ僅かしか見られない状況です。

IT・通信分野などではメリットが生じている分野もあるとは言え、全体で見れば一握りであると言わざるを得ないでしょう。ということは、株式市場はこのような現実に目を瞑り、「コロナ禍を契機に事業構造の転換が否応なしに促進され、より効率的で付加価値の高い社会が実現される」といった将来への成長期待を積極的に織り込んでいるということなのでしょう。

リモートワークの浸透や脱ハンコに代表される効率化推進の流れは、確かにそのような未来を予感させるものです。筆者もこれから社会は大きく変わるのだろうと感じています。しかし同時に、数年先の未来を現時点から織り込むのにはかなり無理があるとも感じています。遠い未来に関してはあまりにも不確定要因が多すぎるためです。

では、もっと短期的に大きな構造変革が実現するのかと言えば、それもまたそう簡単にはいかないだろうというのが実感です。

大きな変革には必ず痛みも伴うものであり、それが短期間に行われるとなれば尚更ではないでしょうか。変革の先の未来は明るいとしても、その前に立ちはだかる足元の痛みの深さが見えない限り、今から手放しに期待するのはやや楽観的過ぎると思います。

新型コロナワクチンへの期待もありますが、冷静に考えれば、ワクチンが有効に機能してもそれは旧に復するだけであり、事業構造や社会構造を変化させるものではありません。

もちろん、第二次世界大戦の死者数(29万人)に肉薄する26万人もの死者を出している米国をはじめ、世界的にワクチンへの期待が極めて大きいことも理解しています。しかし、通常数年かかるプロセスを突貫で推進することのリスクをしっかりと肝に銘じておく必要もあると考えます。

こうしてみると、筆者にはどうも株価と景況感、さらには期待の織り込み方と現実にギャップが広がっているような気がします。期待の織り込みに加え、世界的な過剰流動性がこの状況を演出しているのかもしれません。

現状がバブルかどうかの判断は見方が分かれるところでしょう(実際のところ、バブルは弾けて初めてそれがバブルであったと確認できるものです)。少なくとも今の株式市場はかなりの期待をお腹一杯に織り込んでいる状況のように思えます。

バブルの最終局面に見られる現象

筆者の経験上、バブルの最終局面には、「直感的におかしいと感じることを正当化する尤もらしい理屈が幅を利かし始める」、「ムーブメントに乗るべく、フォロワーが大量に発生する」という事象が頻発すると認識しています。これは仮想通貨バブルの時もそうでした。

では、現状はどうでしょうか。最終局面を示唆する事象は見え始めていますでしょうか。ここは冷静に見定めていきたいところです。

株式投資に臨むにあたり、筆者は「宴にはしっかり参加するべき。しかし、最後まで宴に残ってはいけない」ことを座右の銘にしています。

今は過熱感の高まる株式市場となっています。現在がどのステージにあるのか、読者の皆さんにはしっかりとした見極めを怠らないでいただきたいと考えています。