自分たちの将来のライフプランを考えたとき、「持ち家が得か、賃貸が得か」と一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

特に子どもが産まれると「住むところ」について考えることが増え、夫婦ふたりで暮らす家を選んだときとは、全く違うところが気になってくるかもしれません。

「家を買った方がいいか」、「夫婦で意見が違って困っている」などのご相談が頻繁にありますが、一概にどちらがいいとお答えできるものではありません。なぜならそれぞれにメリット・デメリットがあり、「優先したいものが何か」によって答えが違ってくるものだからです。

ここではどのような観点から「持ち家か、賃貸か」を決めたら良いかを考えていきましょう。

持ち家のメリット・デメリット

まずは持ち家・賃貸のそれぞれのメリットとデメリットを見ていきます。

建売住宅・注文住宅やマンションを購入するメリット・デメリットとして、以下の点が挙げられます。

持ち家のメリット

・家の内装や設備、間取りなどを自分の希望で選べる
・賃貸にはないような特殊な間取りや設備を取り入れられる
・ローンを完済すれば住宅費を抑えられる
・賃貸物件の少ないエリアでも土地から家を建てられる
・リフォームや修繕のタイミングを自分で選べる
・資産になる

持ち家のデメリット

・収入が減っても負担を減らせない
・簡単に住み替えできない
・修繕費や固定資産税などの維持コストが自己負担になる
・購入時の負担が大きい

賃貸住宅はあらかじめ入居者が決まっていないため、良くも悪くも「一般的」で、誰にでも受け入れられやすい間取りや設備になっています。

それに対し、注文住宅を購入する場合は、子どもの人数や年齢差に合わせた間取りや設備、家事動線などを自分で工夫する余地があります。また、持ち家なら賃貸で難しいリフォームなども自分の希望に合ったタイミングでできます。

住みたい地域に希望する賃貸物件がない場合は、土地から購入して自由に設計できるのも持ち家のメリットと言えるでしょう。賃貸の集合住宅に比べて近隣の住人が比較的入れ替わりにくく落ち着いて暮らせるというのも、プラスの要因と考えられるかもしれません。
金銭面で言えば、住宅ローンを完済した後は賃貸に比べて負担が軽くなるため、老後の住居費を抑えられるという見方もあります。

もちろんデメリットもあります。数千万円という住宅ローンを組んで購入すると容易に住み替えることができません。急な収入ダウンに陥っても住居費負担を下げることが難しいほか、ご近所トラブルや子供の進学などがあっても簡単に引越しができない点はデメリットと言えるでしょう。新築マンションで一斉入居の場合などは、あらかじめ近隣にどんな人が住んでいるのか見えにくいことにも注意が必要です。

また、マンションの場合は築年数が長くなるにつれて修繕積立金などが値上がりし、ローンが終わっても住居費が想定ほど安くならない可能性も考慮しておかなければなりません。

賃貸のメリット・デメリット

それでは持ち家に対して、賃貸はどうでしょうか。

賃貸のメリット

・住み替え・引っ越しが比較的容易
・修理費用や設備交換の負担が少ない
・家族構成や収入の変化に合わせて住居費用をコントロールできる
・大きな借り入れをしなくて済む

賃貸のデメリット

・家賃や更新料などを払い続ける必要がある
・希望の間取りや設備を選べない
・自由にリフォームなどができない
・高齢になると新規で契約しにくい
・建て替えや退去など相手都合で住めなくなる場合がある

賃貸住宅のメリットは何といっても「住み替えが楽」ということです。長い人生でみるとライフスタイルはその時々で大きく違ってきます。家族が増えたらのびのびとした広い家に、子どもが自立したら利便性の高いコンパクトな家に、あるいは転勤や子どもの進学に合わせて引っ越すなど、「自分たちの暮らしに合った住まい」を選択できるのが賃貸の大きなメリットです。

住むまでは気づかなかったどうしても耐え難い近隣トラブルなどがあっても、ローンなどの負担が大きくて住み替えできない…といったリスクを減らすこともできます。

また、収入の変化が大きかったり、転勤などの可能性がある家庭では、大きなローンを背負う必要がないことも安心材料と言えるでしょう。

それに対して、借り物であるが故にずっと家賃を支払い続けなければいけないことはデメリットの1つと言えます。特に老後になり、会社からの給料などの労働収入がなくなると、支出の中で大きな割合を占める住居費を負担に感じることがあるかもしれません。

ほかにも建て替えが決まってしまうなど、自分の都合以外で引っ越せざるを得ないことも借り物であるが故にあり得ます。

持ち家は資産になるか?

このように「持ち家か、賃貸か」はそれぞれに違いがあります。これらの違いをどの程度メリット・デメリットと感じるかは人によって大きく異なるでしょう。中でも「資産になるから」という点を重視する人も多いですが、実際に持ち家は資産と言えるかも考えてみましょう。

資産とは、お金を生み出したり、売却したらお金に変えられるものと考えてみます。

例えば3500万円の一戸建てを35年金利1%の住宅ローンで購入すると、総返済額は4150万円程度です(諸費用などは考慮していません)。仮に35歳で購入し、死亡するのが50年後の85歳としましょう。木造住宅の耐用年数は22年、鉄筋コンクリートでも47年ですから(耐用年数とは家の寿命のことではありません)、死亡する頃には家にほとんど価値がなくなっていると言っても良いでしょう。

そうなると、お金に変わる可能性があるのは土地代程度となります。仮に土地が1000万円で売却・換金できるとしたら1000万円が資産としての価値です。「将来1000万円になるものを4150万円かけて買う」と言えるかもしれません。ここで計算上、省いた購入時の諸費用や税金・メンテナンス費用、建物の取り壊し費用なども考慮が必要です。

換金せずに子どもたちに引き継げるという面もありますが、自分たちが85歳になる頃には、子どもたちも60代間近ということも少なくありません。「自分が実際に60代になったときに親から住宅を引き継ぐとしたらどうか」と考えてみるのも良いかもしれません。

住居費のプランニングは人生をトータルで想像する

もちろんここで出した数字は極端な例にすぎません。資産としての価値が高い住宅を購入すれば、生涯で支払う住居費は賃貸より安くなる場合も当然あり得ます。

そして、何よりお金だけでは測れない価値が持ち家にはあります。
帰る家があるという安心感や、自分の持ち物であるという満足感、ローンを組んだ人に万が一のことがあっても団体信用生命保険などによって住居を失う心配が少ないこと、「老後に賃貸は借りられないかも」という不安感を拭えることもあるでしょう。そしてそれらがとても大事な価値観で、重きを置きたいという考え方の人もいます。

「持ち家を買うか、賃貸を借りるか」を考える際には、まず、目先の10年、20年だけではなく最終的に家をどうするかという「出口」を考えながら、より長い期間で自分たちのライフスタイルがどうなるかを想像してみましょう。その上で、家族にとっての優先順位をよく話し合っていくことが大事ではないでしょうか。