ECB会合でインフレ見通し下方修正も

本日10日、ECB(欧州中央銀行)の金融政策会合が開かれるが、そこでユーロ高についてどのような見解が出るかも一部で注目されているようだ。先週、2018年以来の1.2米ドルの大台を記録する中で、ECB幹部からユーロ高けん制ととれる発言が飛び出したからだ(図表1参照)。

【図表1】ユーロ/米ドルの月足BIDチャート(2015年~)
出所:マネックストレーダーFX

ただ、ユーロ高が「行き過ぎ」かといえば、それは全くないだろう。たとえば、ユーロ/米ドルの5年MA(移動平均線)は、足元で1.13米ドル程度なので、1.2米ドルでもそれを5%程度上回ったに過ぎない(図表2参照)。

【図表2】ユーロ/米ドルの5年MAからのかい離率(1991年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

経験的に、「行き過ぎたユーロ高」とは、5年MAを2割程度上回る動きだろう。最近の状況なら、1.3米ドルを超えてくると、「行き過ぎたユーロ高」といった議論が出てきてもおかしくない。

ではなぜ、1.2米ドル程度で、「ユーロ高けん制」発言が出てきたか。「ユーロ高けん制」発言が飛び出した後、一部報道などから、その真意はユーロ高が物価押し下げをもたらすことへの懸念だったとの見方が浮上した。

コロナ問題をきっかけに、経済の悪化が懸念される中で、「物価の番人」、中央銀行ではインフレ率の低下、デフレ化の回避への使命感が高まっているようだ。FRB(米連邦準備制度理事会)は最近、インフレ率が一時的に上限を超えることも容認する方針を表明したが、これもインフレ率低下へより強い警戒感を持っている影響が大きかったと考えられる。

そんなFRBの「新方針」が米ドル安を後押しし、結果としてユーロ高が進んだことで、ECBは警戒感を強め、「けん制発言」につながったと見られている。ただ、本質はユーロ高より、インフレ率の低下への懸念だろう。このため、本日のECB会合ではインフレ見通しの下方修正を行う可能性がある。その上で、インフレ率を上昇させるさらなる金融緩和強化に動けるかが今後の焦点となりそうだ。