8月28日、ナスダック総合株価指数とS&P500は史上最高値を更新

S&P500は先週も3.3%上昇、7日連続で上昇、6日連騰で高値を更新しました。先週金曜日までの8月のS&P500指数は4日を除いて毎日上がったことになります。テクノロジーセクターのパフォーマンスが堅調な米国市場では、先週ナスダック総合が3.4%上昇し、ナスダック総合株価指数とS&P500は史上最高値を更新、1週間を終えました。
先週、FRB(連邦準備理事会)のパウエル議長は、物価上昇率が目標の2%を超えることを容認、事実上、ゼロ金利政策の長期化を図ることを発表し、市場に安堵感を与えました。

米国企業の稼ぐ力を高める方法

一方で、米国企業はコロナ禍の中、躊躇することなく、将来に向かっての見通しを再評価し、人員削減を開始しました。先週だけでもアメリカン航空(AAL)は、追加の政府支援がなければ、1万7500人を一時解雇し、1,500人は本格的に解雇すると発表しました。ユナイテッド航空(UAL)は5万3000人、カジノ・ホテルのMGMインターナショナル(MGM)は、一時解雇者1万8000人を本格解雇、コカ・コーラ(KO)も米国の約4000人に解雇か自主的退職を計画していることを発表しています。また、好決算を受けて株価が一日で26%上がったセールスフォースドットコム(CRM)も1,000人の解雇を発表しました。

このような先週のニュースをいくつも見て30年以上前のことを思い出しました。 
私は1987年に新卒後日本にある米国の証券会社に入社したのですが、その年の夏からニューヨーク本社での研修に参加する機会を得ました。その年の10月には会社が手掛けた株式の大型ブロックトレード案件が大失敗し、会社は莫大な損失を出すことになります。それをきっかけに、会社は大量の解雇を発表しました。当時研修生だった私たちは、世界中から集まった200人の同期仲間と毎日研修ホールに缶詰めで金融業務についての講義を受けていました。

ある朝、研修管理者から、会社は株式部門で解雇を行う事になった説明を受け、研修生には決してトレーディングフロアには行かないように念を押されました。多くの同僚が辞めさせられたトレーディングの現場は雰囲気も悪く、ある意味雇用が守られている新人がのこのこ行くのはよろしくないという配慮からです。私は、社会人になって半年で米国企業の厳しさの洗礼を受けることになりました。

結局私はそんな米国の会社に26年間勤続し続け、プロ向けの外国株式業務に携わってきました。その間、ビジネス環境が良くなると雇用を増やし、悪くなるとすぐ解雇し始めるという繰り返しのサイクルを何度も見てきました。米国企業の柔軟性の高さと言ってもいいかもしれません。しかも、解雇するのは業績が悪い時だけではありません。毎年、相対的に「アンダーパフォーマー」とみなされる社員も辞めさせられることがあります。代わりにより優秀な人材を外から採用し、組織の活性化を図ります。このようなことも、米国企業の稼ぐ力を高めているのかもしれませんね。

アップル(AAPL)とテスラ(TSLA)が株式分割

話は変わりますが、8月31日からアップル(AAPL)とテスラ(TSLA)の株式が分割され、取引が始まります。アップルは4対1、テスラは5対1です。分割のニュースを受け、両社の株式は発表後大きく上昇しました。株価の分割は、企業価値に影響はとは全く関係ないのですが、今の米株市場のセンチメントの良好さを表しているのでしょう。アップルの株式分割のダウ工業株30種平均指数に与える影響についてのレポートはこちらをご覧ください。

米国株は長期的に上昇する

以前にもレポートに書きましたが、S&P500は史上最高値を更新すると5%程度の調整が起きることがあります。今回もその可能性はありますがが、これは決して「バブルがはじける」とかというものではありません。あくまでも一時的なものであり、マーケットにとって必要かつ、健全な下げです。米国株が長期的に上昇するという見方には何の変りもありません。