2024年最終週の米国株は反発の兆しと不安材料が交錯

2024年最後の取引週のS&P500は0.48%、ナスダック100は0.68%とそれぞれ下げて週を終えました。伝統的に年末最後の5営業日と新年2営業日の7日間に株価が上昇する「サンタクロース・ラリー」は、今回実現しませんでした。1950年からこの7日間のS&P500の平均リターンは1.3%の上げなのですが、今回については0.53%の下げで終わりました。

年末の下げは明確なニュースによるものではなく、年末の利益確定売りではないかと考えられます。S&P500はこの2年間で50%以上の上昇を記録した訳ですから、年内に利益を確定したいという動きがあっても何の不思議でもありません。加えて、2025年のトランプ2.0の不確実性に対する懸念もあってのことでしょう。

2024年最後の週には一時的に50日移動平均線を割り込みました。2025年最初の取引日(1月2日)は弱含みで始まったものの、翌日の1月3日にはS&P500は1.3%上昇し、2024年11月6日以来の最大の1日上昇率を記録しました。これは12月末に売り込まれた銘柄の「ディップ買い(安値拾い)」だと思われます。

米国鉄鋼会社USスチール[X]の売却は国家安全保障理由で阻止、政治的思惑も影響か

バイデン大統領は、日本製鉄(5401)による米国鉄鋼大手ユナイテッド・ステイツ・スチール(USスチール)[X]の140億ドル規模の買収を国家安全保障上の理由で阻止しました。これに対し、USスチールと日本製鉄は今回の発表について「政治的目的に利用された」と非難し、法的措置を検討中です。

一方、競合のクリーブランド・クリフス[CLF]は低価格でのUSスチール買収を視野に入れています。このニュースを受けて、今後の生産削減や工場閉鎖の懸念が高まり、USスチールの株価は約6.5%下落。今後に対する不透明感が高まっています。

日本製鉄は当初、USスチールの老朽化した工場への巨額投資、労働組合との契約維持、そして連邦政府の同意なしに10年間生産を削減しないと約束していました。USスチールの労働組合はこの取引に反対しており、雇用維持への懸念が今回の決定に影響したとみられています。また、次期米大統領のドナルド・トランプ氏も「同じ決定を下しただろう」と発言しており、超党派的な懐疑論が背景にあるようです。

日本製鉄は中国の影響力に対抗するための戦略的投資を計画していましたが、これが阻まれる形となりました。この決定は今後の日米関係だけでなく、外国企業による米国への投資や貿易活動にも冷や水を浴びせる形となり、今後の展開に注目が集まります。

今週(1月6日週)の注目は世界最大のテクノロジー展示会のCESと雇用統計

2025年はボラティリティの高いスタートを切りましたが、今後数週間で企業決算や経済指標が次々と発表されることで、市場の方向性がより明確になるでしょう。

今週、日本時間1月7日(火)11時半には、エヌビディア[NVDA]のジェンセン・ファンCEOがラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジーおよびエレクトロニクスの展示会である「CES」で基調講演を行う予定です。次なるサプライズで株価、そしてITセクターを中心としたマーケット全体を動かすかどうか、要注目のイベントとなります。

目先の市場の注目は引き続き経済データですが、まずは1月10日に発表予定の雇用統計が2025年の初期市場における重要な判断材料となるでしょう。予測では16万人の雇用増とされています。これは前月の水準を下回るものの、経済の安定を示す「ゴルディロックス(程良い)」範囲内とみられています。これに対し、予想を上回る雇用増加があれば、経済の回復力が再確認される可能性があります。