安倍首相の辞任表明を受けても海外市場は冷静だった。米国株市場ではナスダックは反発して最高値更新、S&P500は7日続伸して最高値更新、ダウ平均は3日続伸で、2月21日以来、6カ月ぶりに昨年末終値を上回った。日経平均先物の夜間取引は50円程度上昇した。日本株の米預託証券(ADR)はほぼ全面高だった。

安倍首相の辞任がマーケットに与える影響については先週末に書いた緊急レポートの通り限定的なものにとどまるだろう。先週末、辞任発表で急落した余波は広がらないと思われる。週明けの日本株市場は反発して始まるだろう。米国市場の上昇は好材料だが円高が重しとなりそうだ。月曜日に発表される鉱工業生産と中国PMI次第では反発に勢いがつくだろう。日経平均は6月半ば、7月末と大幅な陰線を即座に陽線で打ち消し上昇に転じるといったアクションを2回演じている。今回は先週の下落分を取り戻すにはやや時間がかかるかもしれない。

今週は月末月初週に当たり重要指標の発表が目白押しとなる。国内では31日発表の7月の鉱工業生産に注目。輸出が回復していることもあり前月比5%増程度と大幅に持ち直す見込み。8月と9月の製造業の生産予測も併せてウォッチしたい。また9月8日に予定されているGDP改定値に使われる法人企業統計の発表が1日にある。設備投資に注目したい。米国では1日に発表される8月のISM製造業景況観指数はやや改善の見込みだが3日のISM非製造業景況指数は、大幅改善した前月の反動から低下する見込み。そして週末は雇用統計。週次のイニシャルクレイムも落ち着いてきた。NFPが順調に回復しているか確認したい。中国では31日の製造業PMIが注目される。

これら経済指標と合わせて政治日程にも市場の関心が集まる。安倍首相の後継を選ぶ総裁選の方式や日程は二階幹事長に一任された。9月1日の総務会で決定する。総裁選の方式については、コロナ禍の中、政治空白を作らないことを優先し、時間がかかる党員投票のプロセスではなく両院総会方式となる可能性が高い。そうなると石破氏に不利との見方がある。しかし、新たに選ばれる総裁の任期は前任者を引き継ぐため、21年9月までで任期満了だからその時は党員・党友による地方票を合わせた総裁選となる。仮に今回、石破氏が選ばれなくても1年後の総裁選には再出馬するだろう。現状と変わらなければその時は石破氏となって、また短期間で首相が交代する国に逆戻りだ。それはマーケットにとっても、もちろんこの国にとってもよいことではない。これ以上は「今週のマーケット展望」の趣旨と乖離するので別の機会に述べたい。

今週の予想レンジは2万2800~2万3400円。いずれにせよ、早期に2万3000円の大台を回復することが肝要であり、そうなるものと予想する。