米国株は楽観的なムードの一服からやや後退へと変化
前回コラムで、米ドル/円について「106.80円処をクリアに下抜けると直ちに106.00円処が意識されやすくなる」などと述べましたが、実際に先週末7月24日の米ドル/円はアジア時間に106.70-80円処をクリアに下抜けるや、そのまま下げ足を速めてNY時間には一時105.70円割れの水準まで下押す展開となりました。
ただ、週末終値は106円台を回復しており、ここまでは想定内の値動きと考えることもできると思われます。
とはいえ、週末にかけて米ドル/円が106.70-80円処にあった従前のサポート水準を一気に下抜けることとなった原因については、ここでじっくり考察しておくことが必要でしょう。少し振り返ると、先週の中盤ぐらいから米国株の上値が重くなり、それまで追加の米景気刺激策やワクチン開発への期待などで盛り上がっていた楽観的なムードも一服からやや後退へと変化し始めることとなりました。
むろん、少々オーバースピード気味に上昇していた米国のIT・ハイテク株などが目先的な利益確定の売りに一旦押された部分もあるのでしょうが、ここにきて米中間の対立がかなりエスカレートしてきている点も見逃すことはできません。
米株高が続いている間は「リスク選好のドル売り」と解釈されることの多かった米ドル安ですが、先週末にかけての米ドル安は米経済の先行き不安が台頭し始めていることに伴うストレートな米ドル売りである可能性もあり、その点は本日以降、しっかり見定めて行く必要があると思われます。
もっとも、先週は7月21日に欧州連合(EU)の首脳会議において総額7,500億ユーロ規模の復興基金創設案が合意されるに至り、それを受けてユーロ/米ドルが一段高となったことにより、米ドル安の流れが一層強まった部分もありました。
結局、ユーロ/米ドルは週末高値引けのような状態となり、この勢いはユーロ/米ドルを2018年9月高値=1.1815米ドルや、2018年2月高値から2020年3月安値までの下げに対する61.8%戻し=1.1821米ドルあたりまで一旦は持ち上げる可能性もなきにしもあらずではないかと思われます。
なお、足下のユーロ高はユーロ/円の下値を支えることにも目先的に貢献しているわけですが、一方で豪ドル/円は上げ一服から反落する展開となっており、先週の週足は一目均衡表の週足「雲」上限を一旦上抜ける場面がありながら、結局は長めの上ヒゲを伸ばす格好となって、終値では週足「雲」上限とほぼ同じ水準まで調整することとなりました。
豪ドル/円と日経平均株価の相関関係
この豪ドル/円と日経平均株価の値動きには強い正の相関が認められており、1つには連休明けの東京市場が弱含みのスタートとなったことが少々気掛かりです。
実のところ、日経平均株価の週足も先週は週足「雲」を一時的に上抜ける場面がありながら、結局のところ連休前の終値は週足「雲」とほぼ同水準に留まることとなりました。結果的に日経平均株価の週足「雲」上限は、ますます当面の上値抵抗として意識されやすくなっており、仮に今週あたりから一旦調整入りの色合いを濃くした場合、それに連れて豪ドル/円も一旦調整入りの可能性が高まるものと思われます。
やはり、豪ドル/円や日経平均株価が調整色を強めた場合は、連れて米ドル/円についても一定の下値リスクを警戒する必要が生じます。ただし、米ドル売りの流れにはそろそろ一服感が出てもおかしくはなく、目先的にも米ドルの買い戻しが優勢となれば、なおも米ドル/円は投資妙味に乏しい展開を続けることとなる公算が大です。
よって、当面はユーロ/米ドルやユーロ/円の戻り売り、あるいは豪ドル/円の短期ショートなどが有効かどうかを見定める期間になるものと個人的には考えます。