先週末7月10日、豪ドル/円が一目均衡表(日足)の基準線を下抜けました。同線は、4月6日以降ずっと豪ドル/円の下値をサポートしてきた重要な節目であり、ここで同線をクリアに下抜けることとなれば、暫くは調整含みの展開を余儀なくされる可能性もあると思われます。なお、同線が節目として非常に重要であることは、2020年の1月23日以降~4月3日まで長らく上値抵抗として機能し続けたという“実績”からも明らかと言えます。

むろん、1日だけの値動きで判断することはできず、まだ執筆時点ではクリアに下抜けたとは言えない状態。先週末の米国株が総じて強気だったことから、週明けの日経平均株価が大きく反発すれば、正の相関が強い豪ドル/円も再び日足の基準線の上方に浮上する可能性は十分にあるでしょう。

ただ、週明けの日経平均株価が中国株、とくに上海総合指数の値動きに敏感に反応する可能性もあり、その点は留意しておきたいところ。同指数は先週7月9日まで急ピッチで上昇を続けたものの、週末7月10日には反落しました。

中国景気の回復基調が一層強まると、どうなるか

このところの中国株の上昇は「あくまで官製」と見る向きが多いものの、その値動き自体が中国景気の回復期待を醸成するものであることも事実で、仮に中国景気が一段と回復基調を強めれば、資源国通貨であるところの豪ドルや貿易関係が密接な地域の通貨であるユーロに対しての買い圧力も強まりやすくなります。

結果、豪ドル/円やユーロ/円などのクロス円が全般的に強含みになると、連れてドル/円も強含みになりやすいと考えることができるでしょう。むろん、その逆もまたしかりです。

新型コロナウイルス感染拡大の警戒から低調の米金利

先週の米ドル/円は、基本的に週を通じて右肩下がりの展開となりました。それは、まず全体にドル独り負けの状態が続いたからであると言えます。中国株が急ピッチで上げ、同時に米国株も比較的堅調に推移したことで、いわゆるリスク選好のドル売り圧力が強まったわけです。ここで、米金利も同時に強含みとなっていれば足下のドル売り圧力はかなり相殺されたはずなのですが、肝心の米金利はずっと横這いの状態でした。

米金利の上昇を押さえ込んでいるのは、やはり1つに新型コロナウイルス感染拡大「第2波」に対する警戒がますます強まっていることです。既知のとおり、先週末には米国フロリダ州、テキサス州、カリフォルニア州で、新型コロナウイルス感染による死亡者数が過去最多となってしまいました。このままでは、いずれ米連邦準備制度理事会(FRB)が何らかの追加策に打って出ざるを得なくなるとの見方も捨てきれず、結果として米金利の上昇が押さえ込まれている状況です。

今後の見通しは

リスク回避のドル売りが優勢となるなか、米金利が低調のままだと、ドル売りが円売りに勝って米ドル/円は軟調になりますが、それでも暫くはクロス円が強含みで推移していたことによって米ドル/円は支えられていました。

ところが、仮に足下でクロス円が調整含みの展開になると、米ドル/円の支えが外れてしまう可能性が生じます。むろん、中国や米国の株価が弱含みとなれば、今度はリスク回避のドル買いが優勢となる可能性もありますが、そこで同時にリスク回避の円買いが生じることも事実です。

先週末にかけての中国株や米ドル/円、豪ドル/円の値動きから、目下は其々が1つの正念場にあるとの印象。米ドル/円の場合、今のところ106.80円処が1つの下値の目安となっていますが、同水準をクリアに下抜けると直ちに106.00円処が意識されやすくなると見られます。逆にここで持ち直せば、とりあえずは89日移動平均線が位置する水準(現在は107.66円)まで戻りを試すことになると思います。