先週末発表された米国の雇用統計で、失業率は戦後最悪の14%まで上昇、就業者数は2050万人減少と歴史的な悪化となった。しかし、それにもかかわらず、ダウ平均は前日比455ドル高。ナスダック総合株価指数は今年初の5連騰で年初の水準を上回った。この株価の反応の解釈としては、1)足元の経済が悪いのは当然であり、それは織り込み済み2)感染者数の増加も落ち着いてきて、目線はこの先の経済再開に3)未曽有の金融緩和や政府の経済対策によって景気のV字回復を期待、ということだろう。これだけ悪い雇用統計にも株式市場は反応しなかったので、この先、どんなに悪い経済指標にも反応しないだろう。と、すれば怖いものなし、と言ってよい。

怖いものなし、と言ったがそれは「足元の経済が悪いのは当然だ」という認識に立脚している。この先、経済再開で感染がぶり返し、再び封鎖に逆戻り、というようなことになれば話は別である。当たり前だが、感染の完全な鎮静化がこの先の相場の最大のカギである。

緊急事態宣言は14日ごろ一部地域で解除になりそうで今週は経済活動再開への期待が相場を支えるだろう。東京都など13の「特定警戒都道府県」でも、専門家の判断次第で期限前に解除できる可能性があり、その成否によっては日本株の一段高もあり得るだろう。

今週は3月期の決算発表がピークを迎える。トヨタとホンダが12日、ソニーは当初の予定より約2週間遅れの5月13日に発表予定。今期の会社計画は未定とする企業が続出しているが、株式相場には淡々と受け止められている。それも当然のことだからだ。雇用統計と同じである。今は非常時なのである。普段通りの投資尺度は役に立たない。だから、一部で指摘されている株価の割高感というのも、まったくナンセンスである。いわく予想EPSがどんどん切り下がっているのに株価が戻り、PERが〇〇以来の高水準…というようなものだが、経営者にもアナリストにも正確なEPSの予想ができない状況にあって、予想利益をベースとするバリュエーションなどなんの意味もない。

今週の注目は中国の経済指標だ。15日に4月の工業生産や小売売上高、都市部固定資産投資が発表される。これらは改善が見込まれており、内容次第では日本株相場の追い風となるだろう。

今週の予想レンジは19,800 ‐ 20,500 円とする。