株式を買い付けて議決権を握り、経営陣を送り込んで会社の資産を奪う。そうした投資家はハゲタカ・乗っ取り屋などと呼ばれ、必ずしもよい印象を持たれていません。本連載に登場するアクティビストもそういうものではないかと思われる方も多いかもしれません。
しかし、サン電子の記事で書いたように、最近のアクティビストの活動はそうしたものと大きく異なっています。もちろん、アクティビストは企業価値の向上という「果実」を得るために株式を買い付け、その保有株数を活かして株主提案を行います。しかし、過去のハゲタカ・乗っ取り屋と大きく異なるのはその保有株数が少ないことです。
映画「ハゲタカ」のモデルとされる2007年のブルドックソース(2804)のケースでも、投資ファンド、スティール・パートナーズは公開買付を行い、全株式の取得を目指しました。当時、ほかにも似たような買収があり、これらも過半数の株式取得を目指すなど、経営権の取得を目指したものが多かったです。
一方、最近の傾向ではアクティビストは必ずしも大多数の株式の保有を狙うわけではありません。対象となる会社の経営改善策を訴えることで他の株主の賛同の獲得を狙うのです。サン電子(6736)の場合もアクティビストのオアシスが有した株数は開示ベースで10%弱でした。逆に言えば、最近のアクティビストは他の株主の賛同を得られないと成果が出しにくいのです。
今年は新型コロナウイルス感染症が世界的な問題となっており、経済、マーケットにも大きな影響を与えています。その中でアクティビストの活動に大きな影響を与えそうなのは内部留保に対する見方でしょう。アクティビストの主張の多くは会社の資産の有効活用を訴えるもので、その中でもやり玉に上がりやすいのが過去の利益の蓄積の結果である内部留保です。もちろん、内部留保と言っても適切に投資に回されているものであれば問題ありません。
一方、現預金や遊休資産になっているものは、株主に還元するか、有効な投資を行うように求められます。日本の会社は特に現預金や遊休資産が多い傾向にあり、それらがアクティビストのターゲットになっていました。
しかしながら、今回の感染症の広がりで売上が急減する会社が増え、事業継続のために現金の重要性が増しています。特に影響の大きい航空業界では、日本航空(9201)が2012年の再上場以来継続的に行ってきた配当を2020年3月は無配にするほか、銀行からの資金調達が報道されています。こうした流れはアクティビストの動きにも影響してきそうです(なお、感染症の影響が大きくなってきたこの4月でも剰余金の処分の提案の動きは少なからずあるようです)。
興味深い例もあります。カラオケルームを運営する鉄人化計画(2404)は感染症による事業環境の大きな変化へ対応するため、取締役を専任するよう、株主から臨時株主総会の招集を請求されたと明かしています。今後、アクティビストの動きがどのように変わっていくのか、引き続き注目してまいります。