膠着感、停滞感の1年から「方向性が明確となる年」へ

2019年も残りわずかとなってきました。この1年の相場を振り返ると、かなり長く膠着した展開となり、年末に向けてようやく昨年の上値に肉薄する「掉尾の一振」(とうびのいっしん)という流れとなりました。

企業業績の悪化など国内景気はダレた状況が散見されるようになり、自然災害などがさらにその重石となるという1年であったと言えるでしょう。

昨年のこの時期、筆者はこのコラムで「2019年はデフレに対する克服か回帰かの分水嶺の1年」と位置付けました。結果としては、明確な分水嶺とはならず、昨年に引き続き「もやもや」した1年であったと受け止めています。

概して膠着感、停滞感が否めない1年であったように思います。そこで、2020年は「方向性が明確となる1年」になるのではと予想します。良い方向でも、悪い方向でも(もちろんそれは望みませんが)、様々なイベントを通してしっかりとした1つの流れが生じてくるのではないかとの見立てです。

2019年、消費税増税・ブレグジット・改元の影響

さて、今回は年末最後のコラムということでもあり、2015年以来続けている「翌年(今回は2020年)の重大イベント」を取り上げたいと思います。昨年のコラムでは、消費税増税、ブレグジット、改元などを2019年の注目テーマに取り上げました。

消費税増税は懸念通り引き上げとなりましたが、既に何度も延期されていたせいもあり、特に株価は大きな反応を示しませんでした。ただし、消費税増税が実態経済に与える影響が顕在化してくるのはこれからです。これは2020年にも折に触れて市場で話題になってくると考えます。

対照的に、ブレグジットは迷走を極めました。当初予定の3月からは遅れに遅れ、12月の総選挙でようやく帰趨が明確となったことで、むしろアク抜け感が株式市場には広がりました。

御代替わりとなった令和への移行は、新元号奉祝という雰囲気が予想以上に消費に寄与することとなり、景気の下支えと共に明るい雰囲気を株式市場にももたらしました。

予想以上と言えば、ラグビーワールドカップの盛り上がりや台風被害も強烈でした。これらはちょうど消費税増税とタイミングが重なったため、それぞれのインパクトが測り難くなり、景気の流れも読み難くなるというおまけもつきました。

筆者注目、2020年経済への影響が大きいイベント4つ

それでは2020年はどうでしょう。自然災害は引続き要警戒として、経済への影響が大きいイベントとしては、1月末のイギリスのEU脱退、春のNTTドコモによる5Gサービスの開始、6月末のキャッシュレス・ポイント還元終了、7~9月の東京オリンピック・パラリンピック、そして、11月の米大統領選挙などが挙げられます。

(1)米大統領選挙

ここで筆者が特に注目するのは、やはり米大統領選挙です。約1年にも及ぶ大統領選挙では、有力候補者のコメントや趨勢などがその都度、株式市場に強い影響を与える傾向があります。

しかも、こればかりは選挙当日になってみないと帰趨がわかりません。新大統領誕生となるかどうかに加え、現職のトランプ米大統領が推進するアメリカ第一主義的政策が今後どうなるかなど、米中貿易摩擦の行方も踏まえて、2020年の株式市場の最大のスウィングファクター(変動要因)と言えるでしょう。

個人的には米民主党で社会主義的な傾向が増していることから、今後の「資本主義」の在り方が問われる選挙になるのではとも感じています。ちなみに、2020年は日本でも総選挙が行われる可能性が少なからずある、と筆者は見ています。これらも留意しておきたいところです。

(2)未公開株市場の動向

もう1つ、筆者が注目しているのは未公開株市場の動向です。これは何か大きなイベントがあるわけではありませんが、ここ数年で未公開株投資に流れる資金が急増した結果、バブルのような様相が散見されつつある点を注視しているためです。

未公開株市場なので株式市場に影響は小さいと考えられる方もおられるかもしれませんが、経済はすべて繋がっています。いわゆる「信用」が収縮する局面では、リーマンショックの例でもあるように、経済への影響は大なり小なり発生することでしょう。それらの調整・反動がどこかで出てくるのでは、というリスクシナリオにも目を向けておきたいと考えています。

(3)5Gサービス

そして遂に始まる5Gサービスについては、筆者はより長期の大きなテーマになると受け止めています。最初は携帯端末の買い換えなどが注目されるかと想像しますが、5Gの真骨頂はそれをうまく利用する新サービス・新ビジネスの輩出にあると考えます。

一例を挙げれば、昨今急改善してきた自動運転技術では、5Gインフラの整備・構築に伴い、完全自動化がより現実的なものとなってくると予想します。その他、現在の我々では想像もできないサービスが登場してくるはずです。かつて、インターネットの出現が時間をかけて我々の生活や意識を一変させたように、5Gは同様の変化を巻き起こすのではないかと期待しています。

(4)オリンピック・パラリンピック

また、経済構造への影響という意味で、オリンピック・パラリンピックにも注目します。期間中の交通規制やリモートワークの導入等は今後の我々の働き方を大きく変える可能性があると思っています。とはいえ、そんな理屈抜きに純粋にオリンピック・パラリンピックが楽しみであることに異論はないでしょう。競技の熱さは今年のラグビーに勝るとも劣らない展開となると確信しています。

 

2019年、皆様はいかがな1年でしたでしょうか。そして、一足早いですが、2020年が皆様にとって良い年でありますよう。良い新年をお迎えください!