2019年はデフレ克服か回帰か、分水嶺の1年
みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。
2018年は早くも師走を迎えました。この1年の相場を振り返ると、大きな波乱もなかったものの、上値も重い展開であったように感じます。アベノミクスも6年目となり、国内景気は順調に拡大したものの、その勢いや持続性に徐々に不安が募った1年であったと言えるでしょう。
昨年のこの時期、筆者はこのコラムで「2018年はバブル後遺症からの決別が試される1年になる」と位置付けました。しかし、確かにインフレの萌芽は随所に発現したものの、日本経済がデフレを完全に克服できたかどうかの判断は難しく、この点から見ても、この1年はやや失速感が否めなったと受け止めています。
では、2019年はどういった1年になるのでしょうか。筆者は「デフレに対する克服か回帰かの分水嶺の1年」と位置付けたいと思っています。
さて、今回は2015年以来続けている「翌年(今回は2019年)の重大イベント」を取り上げたいと思います。
昨年のコラムでは、農業関連、AI関連、有事を2018年の注目テーマに取り上げました。農業関連は減反政策廃止やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)発足による農産物の輸出期待の高まりから、AI関連では人手不足対応による実務への浸透加速想定から、そして有事は波乱リスクとして、それぞれ想定したものです。
結果的に、農業関連は盛り上がりにやや欠け、(これは幸いにして、ですが)大規模な有事も発生しませんでしたが、それ以上にAI関連(とその需要先と連想される人手不足関連)は息の長い相場のテーマになりました。
これら以外に市場の注目を集めたテーマとしては、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)関連、IoT(モノのインターネット化)関連などがありましたが、これらはやはり広義のインターネット関連と言えるものでしょう。今年もやはりテクノロジー関連への注目度は高かった、と振り返っています。
筆者注目、市場に影響が大きい2019年イベント3つ
それでは2019年はどうでしょう。経済への影響が大きいイベントとしては、3月の英国のEU離脱(ブレグジット)、6月のG20日本開催、7月の参院選選挙、9月のラグビーワールドカップ、そして、10月の10%への消費増税などが挙げられます。
ここで筆者が特に注目するのは、やはり消費税です。財政健全化という狙いは既に周知されているところでしょう。しかし、国内景気の減速懸念が徐々にくすぶり始める中、予定通りの増税となると再びデフレに舞い戻ってしまうトリガーになると警鐘を鳴らす向きは少なくありません。そのため、これまで2回延期となったこともあり、増税は既に法律にも明記されてはいるにもかかわらず、市場では依然として消費増税の実施について半信半疑で受け止めている印象です。
消費増税の施行が確定すれば、それがデフレ克服かデフレ回帰かの分水嶺となりかねず、市場はかなり大きな反応を示す可能性は高いと予想します。その場合には、いわゆるディフェンシブ銘柄が緊急避難的な投資テーマとして注目されるのではないかと考えます。ちなみに、一部サービス・商品については新税率を前倒しで適用せざるを得ないケースがある以上、増税に関する最終決定は遅くとも4月頃になるはずと想定しています。
英国のEU離脱も要注目でしょう。これも既に周知された材料ですが、その離脱の方法や手筈についてはまだまだ決まっていない部分が多く、先行きまだ不透明です。株式市場としては穏便かつスムーズなEU離脱が理想となりますが、ある意味ハードランディング的な離脱となれば、英国とEUいずれにも相応の副作用が発生するリスクは否めないでしょう。
それらは世界経済に負の影響を与えかねず、EU内部で起こりつつある失業率の増加やドイツの政権不安定化と結びつくこととなれば、政治的なパワーバランスをも変動させかねません。これらは当然、日本の株式市場にも影響を与えるのでは、と懸念します。
3つ目の注目点としては、世界的な貿易戦争の行方を挙げます。保護主義的な動きは米国にとどまらず、既に世界的にも広がりを見せつつあります。その結果、各国では内製化を含む自国完結度の引き上げを否が応でも検討せざるを得ないケースは増えてくると予想します。ただし、これはマイナスばかりではなく、ビジネスチャンスとして内需の拡大にも繋がり、海外へは輸出よりも現地生産という流れも予想されます。輸出機会の逆風をどう活かすか、が問われることになると考えます。
そしてなんといっても、2019年の最重要事項は5月の今上陛下の譲位、新天皇即位です。改元により、昭和生まれの筆者は「昭和」がさらに遠くなったと感じることでしょう(笑)。
振り返ると、2018年はボックス圏での推移に終始した印象です。皆様はいかがな1年でしたでしょうか。そして、一足早いですが、2019年が皆様にとって良い年でありますよう。良い新年をお迎えください!