ぼーっと雲を見ていました。最近雲をゆっくり見るなんてなかったなぁ、と思いながら。小さい頃、雲を見るのが好きでした。あ、顔だ、あ、犬だ、なんて思いながら、刻々と変わる模様を眺めていました。積乱雲がどんどん伸びていく姿は、そんな様々な雲の表情の中でも一番のお気に入りで、強い印象があったことを覚えています。
夕焼け空や、暮れなずむ空を見るのも好きでしたが、それよりも真っ昼間の雲、特に夏空の真っ白な雲が、青空の中で表情を変えていくのを見るのが一番好きだったかな。何故だろう?やはり私は、変化することを強く指向する性分なんだと思います。囚われない姿も心地良いし。丸山薫の「水の精神」という詩も好きでしたが、丸山薫の水は川の水のイメージで、それよりも雲の方が遙かに雄大で自由で明るい感じがします。坂口安吾の「私は海をだきしめていたい」という小説も好きです。しかしあれも囚われている所が出発点になっている気がします。
雲はいいな。もっと空を、雲を、見上げようと思ったのでした。