一昨日、投資会社のエクシア合同会社が東京地裁から破産手続き開始決定を受けました。累計出資者数1万人超、出資総額は数百億円と報じられています。
FXという浮き沈みの激しい投資手法にも関わらず、設立間もない2016年のリターンは年率97%、翌17年で44%。連戦連勝をうたう代表者は海外証券会社、ファンドの為替トレーダーだったということで、数年前に、知人から「業界で名前を聞いたことがあるか」と尋ねられ、この会社の存在を知りました。
運用成績とは分けて考えるべきとはいえ、SNSでは代表者の華やかな生活ぶりも話題でした。2021年8月に本社を移転しましたが、新しい六本木のオフィスは、投資を迷う個人を魅了する豪華さだったと聞いています。
さらに特殊だったのは、資金の集め方でした。合同会社社員権の自己募集という形をとっていたので、金融商品取引法の適用外でした。エクシア以外にも、L&A Investmentとその関連の合同会社ブリッジが同様のスキームで資金を集め、今月破産手続きを開始しました。
この合同会社の社員権募集については、2022年10月にようやく内閣府令が改正され、業務執行社員以外が行う場合、金融商品取引業の登録が必要になりましたが、その間にもエクシアへの投資額は数百億円積み上がっていたとみられます。規制の適正化まで時間がかかりすぎたのではと思います。
一般論として、市場がピークを過ぎたあたりには、さまざまな怪しい話が出がちです。本当に高いリターンを得た人の話なども飛び交うので、実体がない高い利回りも真実味があるように聞こえることがあります。しかし、例えば、投資スキームについて、「独自の先端の投資手法なので他では見られない」などと言われたり、代表者の経歴や、運用スタイルについて少しでも不安に思ったら、絶対に手を出すべきではないでしょう。それよりは、マネックスのウェブサイトを見て、爆発的リターンでなくても、そこそこ良い投資を探すのが安心だと思います。
- 大槻 奈那
- ピクテ・ジャパン株式会社 シニアフェロー
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内外の金融機関、格付機関にて金融に関する調査研究に従事。Institutional Investors誌によるグローバル・アナリストランキングの銀行部門にて2014年第一位を始め上位。政府のデジタル臨時行政調査会、財政制度等審議会委員、規制改革推進会議議長、中小企業庁金融小委員会委員、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のアドバイザー等を勤める。日本経済新聞「十字路」、日経ヴェリタス「プロの羅針盤」、ロイター為替フォーラム等で連載。日経Think!エキスパート・コメンテーター、テレビ東京「モーニングサテライト」で解説。名古屋商科大学大学院 マネジメント研究科教授 東京大学文学部卒、ロンドンビジネススクールMBA、一橋大学博士(経営学)
著書:
『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、
『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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