衆院選の結果を受け、思うところはいろいろありますが、今後の政局を含め事態は流動的。ハッキリしたことがまだわかりませんので落ち着いてから整理したいと思います。しかし、株が上昇するとは意外な展開。何事も決め打ちは禁物ですね。
さて、石破首相は首相になる前は、金融所得課税について「首相になったら実行したい」と話していましたが、首相となった途端に「現時点で具体的に検討することは考えていない」と軌道修正。振り返ってみれば岸田前首相も総裁選で「金融所得課税の見直し」に言及していたことが嫌気されたとみえ、総裁選から岸田政権発足を挟んで8営業日連続で日経平均が下落するという岸田ショックを経験しています。増税が投資家から歓迎されるはずもなく、もしこれが実現すれば日本株への投資意欲は著しく減退すると思われます。
一方、お隣中国では富裕層の海外投資収益に対して最大20%の課税を始めていると報じられています。景気が悪いのに課税強化です。中国では2018年、脱税防止を目的とした世界的な情報共有システム「共通報告基準(CRS)」が導入され、富裕層の財が可視化されたことと、このところ中国の財政難から税収を増やす方針が強化されています。
どうやらこれまで中国の富裕層の海外投資収益への課税は抜け道が多く、見逃されていた部分も多くあったようですが、こうした脱税を見逃さないためのシステムがCRS。導入から6年にわたって約150の管轄区域と各加盟国の納税者の口座情報を交換してきたことで、ようやく課税機会を得たとしています。1000万ドル以上のオフショア資産を持つ富豪、そして香港、米国に上場している企業の株主がターゲットと報じられていますが、ここで懸念されるのは彼ら富裕層資産の納税のためのキャッシュ化。今のところ大きな影響があるようには見えませんが、中国当局が掲げる「共同富裕」、富の再分配の意向に沿った政策ということで、人々の不満を散らす意味でも徹底的にやりそうです。日米の選挙も重要ですが、財政が切迫している中国の動向からも目が離せません。
- 大橋 ひろこ
- フリーアナウンサー
-
フリーアナウンサー/ナレーター/個人投資家。福島県出身。アナウンサーとして経済番組を担当したことをきっかけに自身も投資を始め、現在では個別株、インデックス投資、投資信託、FX、商品先物と幅広く投資している。個人投資家目線のインタビューに定評があり、経済講演会ではモデレーターとして活躍する。自身のトレードの記録はブログで赤裸々に公表しておりSNSでの情報発信も人気。一時期は海外映画やドラマの吹き替えなど声優としても活動していたが、現在は経済番組に専念。現在ラジオNIKKEIなどで経済番組レギュラーを多数抱え、キャスターとしても多忙な日々を送っている。