2024年10月29日(火)23:00発表(日本時間)
米国 コンファレンスボード消費者信頼感指数
【1】結果:現況指数、期待指数いずれも上昇し消費者マインドの改善を示す
10月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は、108.7を記録しました。市場予想(99.5)と前回結果(99.2)を大幅に上回り、消費者マインドに改善が見られました。
【2】内容・注目点:労働市場の評価は改善し、大型購入計画者も増加
米消費者信頼感指数とは、全米産業審議委員会が5,000人の消費者に対して、現状(経済、雇用の2項目)と6ヶ月後の予想(経済、雇用、所得の3項目)について調査し、指数化したものです。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、その数値に注目が集まります。また、図表2の通り、景気後退時には、本指数が急激に落ち込む傾向にあり、景気動向の判断にも用いられます。
そして、10月の米国消費者信頼感指数は前月比で9.5ポイント上昇し、108.7を記録しました。これは2021年3月以来の最大の上昇幅であり、景気後退期を除いた通常時の平均値(97.9)も上回っています。ただし、依然として過去2年間の狭いレンジ内での推移が続いており、このレンジを完全に上抜けるには至っていません。
内訳を見ると、現況指数は10月に138.0となり、9月の123.8から急反発しました。現況指数(図表2の灰色バー)は、9月まで下向き傾向にありましたが、今回反発して大幅に回復を示したことで、下落トレンドが転換となるか来月以降にも注目です。
また、期待指数(図表2の黄土色バー)も10月に89.1となり、8月の82.8から上昇しました。景気後退の指標とされる80を4ヶ月連続で上回っており、消費者の将来の見通しが回復傾向にあることがわかります。
一方、消費者の労働市場に対する評価はこれまで軟化傾向が続いていましたが、10月には改善が見られました。市場では労働市場の強さを測る指標として、「雇用は十分にある」と回答した割合と「仕事を見つけるのが難しい」と回答した割合の差が注目されています。図表3の青色折れ線を見ると、この指標は9月まで上昇基調でしたが、10月には下落し、労働市場に対する評価の改善が示されました。
過去の動向から、この指標は失業率と同様のトレンドを示すことが多いですが、今回の結果を見る限りは、11月1日(金)に発表される10月の雇用統計で、失業率が急激に悪化するような兆候は見られませんでした。
住宅・車の購入計画ありと回答した消費者は10月に上昇
また、10月には「車や住宅の購入計画がある」と回答した消費者の割合も増加しました(図表4参照)。現状や将来の見通しが改善する中、9月には利下げが実施されたことから、これまで低調だった耐久財などの大型支出も今後さらに増加していくことが期待されます。
【3】所感:個人消費の緩やかな拡大に期待、労働市場は消費者信頼感指数とJOLTS求人件数で相反する状況を示し次の焦点は雇用統計へ
今回の結果は、米国の消費者マインドが市場予想を上回る改善を示し、米景気への楽観的な見方を広げるものとなりました。消費者マインドは、実際の個人消費動向に影響を与えるとされているため、米国経済を支えてきた個人消費の今後緩やかな拡大が期待されます。第3四半期の米GDP(速報値)は、10月30日(水)に公表されます。
また、労働市場に対する評価も改善しており、11月1日に雇用統計発表を控える中でポジティブな材料となりました。
一方、消費者信頼感指数と同時刻に発表されたJOLTS求人件数は市場予想を大幅に下回り、消費者信頼感指数とは対照的に労働市場の減速を示しています。ハリケーンの被害やボーイングのストライキなど、一時的な悪化要因も多く含まれているため、10月分の雇用統計の解釈は容易ではありませんが、注目が集まります。事前の市場予想では、非農業部門雇用者数が11万人増、失業率は4.1%で横ばいと予想されています。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐