トランプ大統領による対中関税「第4弾」の表明を受け、米中貿易戦争の激化と世界景気減速に対する懸念が一気に強まり、株価は急落、為替は円など安全通貨が買われる展開となっている。今週も米中貿易問題が相場の重石になると考えるのが常識的な発想かもしれないが、あえて反発シナリオを提示したい。

週間ベースで見ると、ダウ平均の先週の下げ幅は今年2番目の大きさ。S&P500は相場急落に見舞われた昨年12月以来の大幅安。このような株安が一段と進行することはトランプ大統領も望んではいないだろう。よってこれ以上株式市場の悪材料となる事態をトランプ大統領が引き起こすとは考えにくい。

また、対中関税「第4弾」の表明というカードをここで切った以上、これより悪い材料はもう当面出てこない。「第5弾」はもうないし、10%の税率を25%にするのが考えられる中で最悪シナリオだが、ただでさえ「第4弾」はアップルをはじめ米国企業と米国消費者に対する影響が大きいため、大統領選を来年に控えたトランプ氏がそれを強行するとは思えない。撤回こそあっても税率を引き上げで適用することはないだろう。そう考えれば、現在の状況が最悪シナリオを織り込んだもので、これ以上のダウンサイドは考えにくい。

為替は行き過ぎの感があるが、日経平均は422円安と急落した7月18日終値を割り込んでいない。その安値は翌19日に420円高と即座に相場自身が「否定」した経緯があり、事実上の底とみていいだろう。すなわち2万1000円が底値である。一目均衡表の雲の下限で先週末はなんとか踏みとどまった。ここで切り返せれば短期的なWボトムだが…。

先週末シカゴの日経平均先物は2万1000円を割っているので東京時間でも取引時間中に、あるいは終値でも1日か2日くらいは2万1000円割れがあるかもしれないが、あくまでも一時的と思われる。その理由は日経平均のPBRは1.05倍であり、概ね底値に達しているからだ。

米国の10年半ぶり利下げにばかり気を取られていたマーケットは、対中関税「第4弾」の表明で虚をつかれた。「ショック安」の様相だが、それゆえ時間が解決するところもある。週末を挟んで落ち着きを取り戻せば、下げすぎた反動で戻りを試す場面もあるだろう。今週は決算発表後半戦のヤマ場を迎える。日経新聞「スクランブル」も書いた通り、先週金曜日のような大幅安の相場でも景気敏感株の一角で逆行高を演じる銘柄が散見された。日本株の地合いはそれほど弱気一辺倒に傾いているわけでもない。今週、一段安する場面があれば押し目買いの好機と捉えたい。

レンジは2万750円~2万1600円とする。