今年は3長官と直接話す機会に恵まれた
今年も師走の季節となった。振り返ってみると今年は香港政府3人の長官と直接お話しする機会に恵まれた。その3人とは、初の女性行政長官(Chief Executive)Carrie Lam(キャリー・ラム)氏、財政長官(Financial Secretary) Paul Chan(ポール・チャン)氏、そして官房長官(Chief Cabinet Secretary)Matthew Cheung(マシュー・チャン)氏のお三方である。
香港の政治システムを少しここで説明する。
香港の政治システムは中国大陸とは全く異なり、「一国二制度」方式の下、行政府と立法府が存在し、立法府の議員並びに行政長官は選挙によって選出される。
行政長官選挙で選ばれた方は、最終的には中国本土政府からの任命を受ける形となっている。立法府は、完全普通選挙ではないものの、10以上の政党が少ない70議席確保に向けて争う形になる。ここで特徴的なのは、行政長官に限らず行政府の長は、いずれの政党にも属さず、政党の影響力を極力排除した形の、「行政主導」の運営がなされる仕組みになっている。
従って、お会いしたお三方は、皆さん政党に属さずいわゆる「政党政治家」ではないが、日本でいえば首相並びに大臣クラスということができる。キャリー・ラム氏は、香港政府公務員として1980年から務めておられるし、マシュー・チャン氏も同様に公務員としてのキャリアは長い。ポール・チャン氏は元会計士協会の会長まで務められたバリバリの会計士である。
3長官の政策に対する確信と強い意志
いずれもあるランチ会でSpeakerとしてお呼びし、簡単なお話しをしていただいた後に参加者から質疑応答をする形で会合は進む。最初の質問者は幹事役の筆者が指名されるのが常なのだが、筆者は質問される側にとって「これは質問されたら嫌だな」という問題提起型の質問をする事にしている。
その「ちょいと意地悪」質問に対する各氏の対応を見ていると、さすが香港政府を代表する3氏だけあって、どこぞの国の大臣と違い、しどろもどろということは全くなく即答する形でお答えが返ってくる。それぞれが自らの担当分野に精通しておられるので当たり前なのだが、その答え方にそれぞれの三人三様の個性が出て来る。
キャリー・ラム氏は、質問に対して冷静にしかもそこはかとなく優しい気持ちがあふれた答え方をし、ポール・チャン氏は、さすが会計士出身だけあり反論数値を立て板に水の如く並べて財政金融政策の正しさを説明され、マシュー・チャン氏は、香港という都市の素晴らしさを額に汗をにじませながら熱弁される。
色々と世間では何かと批判の的になりそうなお三方だが、直に接してお話しをし、疑問点をぶつけると、底流には、香港という街に対する熱い思いと今の香港の政治の枠組みの基本となる「一国二制度」「香港基本法」、そしてそれに連なる様々な政策、例えば香港ドルの米ドルリンクなどに対する確固たる確信と強い意志が伝わってくる。
筆者は、香港で事業を展開し、多くのお客様をお迎えする1人の経営者のはしくれとして、このような香港トップ3名を抱く香港という街に大いなる安心感を持ち、明日もまた頑張っていこうという気分になる。ここにも香港の強みを見出した気がしたものだ。さて今年も後1ヶ月、頑張っていこうと思う師走である。