・米国で2年間の歳出および債務上限引き上げで与野党が合意した。3月初旬に政府の資金が枯渇し、2011年のような米国の格下げ→金利上昇が懸念されていたが、今回の合意で一旦は安心感。

・それでも債券価格は下落(金利上昇)。政府債務リスクが再び意識され始めた模様。歳出上限引き上げ額は従来想定を上回る。来週発表の1.5兆ドル以上のインフラ投資の負担も加わるためだ。

・当面はバーナンキショック時のように、金利は株を、株は金利を注視し、金利と株価の逆相関が鮮明に。ただ、金利再上昇で株価が再度下落したとしても、3月のFOMCで利上げを見送れば底入れされる。当面米株は金利上昇に怯えて上げ渋る可能性はあるものの下値は限定的。

米国の暫定予算・債務上限騒動は落ち着く

2/7(現地時間)に米国で2年間の歳出規模について与野党の超党派での合意が成立した。暫定予算の正式な可決は8日だが、その前に、歳出拡大で合意できたことは大きな前進である。

今回の合意の注目点は、なんといってもその規模である。2018会計年度(17年10月~18年9月)と19会計年度の裁量的経費歳出上限を合計3千億ドル程度(約33兆円)、13%も引き上げるという大盤振る舞い。特に、防衛費が従来報道されていた金額から大幅に増加した。秋の中間選挙を意識する両党の思惑を背景に合意に至ったとみられている。

注目されていたもう一つの点は、債務上限問題(*)だった(図表1)。もし2月中に合意できなければ、米国債格下げもあり得た。2011年に債務上限問題が混乱した時には、格付け会社S&Pにより米国債が初めてAAAから格下げされ、市場が動揺した。このような事態を早期に回避したことは、ある程度既定路線とはいえ、やはり安心材料だった。

(*)2011年以降米国は、財政健全運営のため、政府の借り入れに上限を設けている。これが、減税の前倒し影響で、3月前半には超過する見通しとなっていた。

その流れでいけば、米国債が買われ利回りは低下するはずだが、その後米国金利はむしろ上昇した(図表2)。これは、今回の大盤振る舞いの歳出案と、来週12日に発表される最低1.5兆ドルのインフラ投資による債務膨張リスクのためだ。

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トランプ大統領のインフラ投資=米国の債務の一層の膨張で金利は上昇へ

インフラ投資は10年間合計で1.5兆ドル以上と発表されている。調達方法は未定だが、民間と政府セクター双方による、債務の調達が大半とみられる。

しかし、米国の総債務(民間+政府)は昨年既に、史上最高の47兆ドル(5,200兆円。ちなみに日本は2,011兆円)に達している(図表3)。GDPに対する債務の比率も戦後最高である。ここ数年はGDPの伸びで上昇は抑えられていたが、インフラ投資と歳出拡大で、それぞれ民間と政府の債務の双方が拡大するだろう。これは、明らかに米国金利の上昇要因となる。

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米国の政策金利は引き上げられるのか?

市場では、3月20-21日のFOMCでは、利上げ"あり"との予想が依然として大勢を占めている。株価暴落後、ここ数日の地区連銀総裁の発言でも、景気の好調さが強調され、株価下落は「過剰な反応」(シカゴ連銀エバンス総裁)との見方が示されている。このまま株価が落ち着けば、好調な景気やインフレ率を背景に、3月の利上げの確度は高いだろう。

波乱要因があるとすれば再度の株価暴落である。当面、株価は金利を警戒し、金利は株価を注視するという"お見合い"状態が続くだろう。同様の状態に陥った2013年5月頃のバーナンキショックの時は、しばらくは、金利が上昇すると株価が下落するという逆関係が明確だった(図表4)。

その後、金利上昇と株高の関係が順相関、つまり、経済成長を前提に、金利が上昇しても株価が上昇する状態になったのは、9月に金融政策が維持され、引き締めへの転換が当面ないということが示されてからだった。

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また金利が上昇したら株価が暴落するのか?

このような市場の心理状態では、市場金利が急上昇すれば、再び株価が下落するリスクは高い。しかしそうなれば、3月のFOMCでは政策金利を引き上げにくくなり株価のバックストップになるだろう。今回の暴落で、下落からの持ち直しの力も示された。

一方、市場金利が安定すれば、株価も安定し、政策金利を引き上げやすくなる。これは今のところ想定通りであり、利上げが株価に再度の動揺を与えるとは考えにくい。これからの1か月このシナリオに向けて利上げを市場に一層浸透させていくだろう。

つまり、どちらに転んでも、金利上昇に対し米国の株価が過度に敏感になる状態は続かないと思われる。また、中長期的に、減税やインフラ投資による経済成長率の押し上げ効果が顕著になれば、金利上昇の影響が新興国に及ばない限り、金利上昇不安は株式市場でさほど意識されなくなるだろう。