外部環境の悪化続くなかでの投資スタンス

円高が止まりません。日本市場が祝日で休場だった11日、米ドル円は一時110円台まで円高が進みました。1月末のマイナス金利の導入発表時に121円台まで円安が進んだことからすると、わずか2週間ほどで10円以上円高が進んだことになります。これは平常時では考えにくい異常なスピードの円高進行です。もちろん投機的な円買いなどもあるのでしょうが、筆者には市場がなんらかの経済危機の発生を怖れているように思えてなりません。

前回のレポートでも記したように、この異常な円高が起きる前の10-12月期の企業決算において通期の業績予想の下方修正が進み、日経平均採用銘柄の1株利益(EPS)は1,270円→1,130円まで低下しました。そして、足元の為替水準は企業の想定以上に円高が進んでいます。例えばトヨタ自動車(7203)は今期の想定為替レートを1ドル=120円においています。つまり、1-3月期の業績はさらなる下振れを覚悟しておくべきだということです。そして、10-12月→1-3月と事態が悪くなっているということは、来期の企業業績にも過大な期待を持つことは難しいでしょう。

もちろん筆者の想定は悲観に振れ過ぎている可能性があります。原油価格の反発など環境が好転すれば、事態は一変するかもしれません。ただ、現在は悲観的なシナリオを頭に置いて投資行動を行うことが望ましい局面だと筆者は強く思っています。具体的には、事態の一段の悪化に備え現金比率を高めつつ、業績好調にもかかわらずマーケット全体に引きずられて株価が叩き売られる銘柄を安値で拾うことを意識すべき局面ではないかと考えています。

そのような考えのもと、「資金の逃避先として検討できる銘柄」と題し、「(1)小売業」「(2)サービス業」をご紹介してきました。本日は、業績好調な建設業の銘柄をご紹介します。

業績が非常に好調な建設業

企業の決算発表シーズンも終盤に差し掛かっています。筆者は毎日「適時開示情報閲覧サービス(TDnet)」をチェックしているのですが、全体的に企業の業績下方修正が目立つなか、逆に好業績が目立つ業種がありました。それが建設業です。そこで、3月決算を採用している建設業に属する銘柄のうち、既に10-12月期の決算発表を終えた78銘柄について、その結果を集計しました。すると、以下の表のように前年同期比から大幅に増益していることが確認できました。10-12月期の増益率は4-6月期には及ばないものの、7-9月期に比べれば増益率が7ポイント拡大しています。

さらに、期初に発表した通期の営業利益予想と現時点での通期の営業利益予想を比較したところ、上述の78社中、期初から営業利益予想を上方修正した企業が47社(60%)、変わらずが28社(36%)、下方修正が3社(4%)%と業種全体の中で上方修正を行った企業が多数を占めることがわかりました。期初予想の営業利益から現在の予想営業利益の増加率が大きい10社は以下のとおりです。

このように業績好調企業が多い建設業ですが、その理由はどのようなことが考えられるのでしょうか。企業の業績予想の修正理由を見ていくと目立つのが、「工事採算の改善」という文字です。建設需要が旺盛で、利益率の高い案件を選んで請け負うことができる状態にある、ということでしょう。

もちろん、冒頭に記したような経済危機が発生し、国内経済にも影響が波及すれば建設需要が鈍化する可能性は否定できません。ただ、その場合には政府による景気対策実施の可能性が高まります。公共事業等が増加すれば建設業界にとっては恩恵となるでしょう。2020年の東京オリンピックに向けて今後数年間は東京を中心に建設ラッシュが続くと見込まれ、その意味でも建設業界には一定の需要下支えを見込んで良いのかもしれません。

資金の逃避先として検討できる銘柄(3)建設業

このように業績好調な建設業界の中から、「資金の逃避先として検討できる銘柄」として、「業績が好調で利益率が高く、財務健全性の高い銘柄で、かつ株価に割高感のない銘柄」をピックアップしました。具体的な選定条件は以下のとおりです。

<選定条件>
・業種分類が建設業
・過去5期のうち4期以上で前期比営業増益
・過去5期の通期業績で一度も営業赤字になっていない
・過去5期の通期営業利益率が平均5%以上
・直近の通期業績発表時の自己資本比率が50%以上


・予想1株当たり配当は会社発表値を利用
・予想配当利回りは(予想1株当たり配当÷2月10日終値)で計算
・予想PERは2月10日時点のQUICKデータを利用