今日、日経平均は反落し、前日比128円安の2万2694円で終えた。前日まで4連騰、来週に重要イベントを控えての週末とあっては当然の一服だろう。日経平均は25日、75日、200日の各移動平均がすべて上向きになっており相場の上昇基調はより明確になっている。これはファンダメンタルズが良好だから。以前から日経平均と景気動向指数の連動性については触れてきたが、昨日発表された4月の景気動向指数(CI、一致指数)は117.7と前月比で1.7ポイント上昇した。今日発表されたGDP改定値は一次速報と同じくマイナス成長のままだったが、それは1-3月期と終わった話だ。1-3月期は確かに景気は落ち込んだが4-6月期は戻るというのがコンセンサス。景気動向指数の大幅な回復はその示唆となるだろう。日経平均が5月下旬に一時2万3000円を回復した背景は、この景気の持ち直しであり、それはこの先も継続するだろう。
今日こそ株価は反落したが、米国株も日本株もメディアが「貿易戦争」と書き立てるのを横目に堅調な足取りである。「貿易戦争」はあくまで「懸念」であって、今月に入って発表された米雇用統計やISMの指数に表されるように米国経済の「実体」は極めて良好である。その一方、長期金利は落ち着いており、結果として「適温相場」の環境に戻ってきたと言える。もとより「南欧不安」など本質的な問題でないと先週のレポートで切り捨てたが、本当に何の問題でもないのでそのまま完全に無視することにする。
日米欧主要7カ国(G7)が今日から明日にカナダで開く首脳会議(シャルルボワ・サミット)を前に、米国の通商政策で紛糾必至と悲観的な論調がメディアにあふれる。前哨戦の財務相会議(5月31日~6月2日)について日経新聞は、
<1時間強にわたり6カ国が「世界貿易機関(WTO)ルール違反だ」と責め立てた。>
<カナダは米国を名指しし「懸念と失望」を表明する異例の声明文を発表した。>
<「これほど意見が一致しなかったG7は歴史上例がない」(ドイツのショルツ財務相)ほど荒れた。>
と述べている。
しかし、この会議のメンバーは財務相であって通商政策の主管大臣ではない。通商政策の司令塔である世耕弘成経済産業相は同じ時期に、パリで日米欧の通商閣僚会合に出席していた。その場にはEUの通商担当、マルムストローム欧州委員とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表もいた。日欧は輸入制限や関税引き上げなどに反対したが米国からなにも引き出せてはいない。それでも日米欧の通商政策担当3者で合意したことはあった。第三国による過剰生産、市場をゆがめかねない補助金、強制的な技術移転などの行為に共同で対策を講じる必要があるということである。「第三国」とは無論、中国を念頭に置いている。米国があまりにも保護主義を強め、同盟国である日欧との溝が深まれば、米国にとってより重要な中国・ロシアとの対抗軸を失ってしまう。そのあたりの最低限の外交センスはトランプ政権にだってあるだろう。
先週のストラテジーレポートではトヨタを取り上げ、トランプ政権の保護主義など意に介さない強さと述べた。今週目立ったのは自動車株の堅調さであった。日経クィックニュースは、「株、トヨタ急回復で4日続伸へ 米経済成長に関心」と報じた。記事は「日本企業で時価総額最大のトヨタの戻りの貢献が大きい。日経平均が一時2万2000円を下回った5月30日には6825円の安値を付けたが、6月7日には7600円台まで急回復した。1月18日に付けた年初来高値7806円も視野に入る。前期決算と同時に発表した最大3000億円の自社株買いが追い風だ」と伝えている。
米国景気の強さ、円安、自社株買い、etc.トヨタ株上昇の要因はいくつかある。それに加えて、僕は「トヨタのグループ力」の再評価があるのではないかと思う。先週トヨタは、デンソーにエコカー向けの電子部品事業を集約すると発表した。生産を移管するだけでなく開発機能も一本化する。まさに電動化時代に向けてトヨタグループの再編が本格的に動き出したと市場はとらえているのではないか。
また今週伝わったニュースとしてはホンダジェットの国内販売がある。小型ビジネスジェット「ホンダジェット」を丸紅と組んで2019年前半に日本で出荷を始める。もちろん国内には課題も多くすぐに儲かるかは見えない。しかし、ホンダジェットは「技術のホンダ」の結晶であり、ホンダらしさの象徴である。
また、ホンダジェットのニュースを伝えた日経新聞の同じ紙面にマツダの記事もあった。<マツダ、ディーゼル「継続」 他社撤退相次ぐ中 環境性能で勝負> 「ディーゼルエンジン技術は企業としての強み。やめる必要はない」という。
トヨタの総合力、ホンダ・マツダの技術力。そして各社の意地とプライド。日本の自動車メーカーの底力が試される時である。僕は日本の自動車メーカーはもっと評価されていいと考える。