マーケットは落ち着きつつある。米中の通商摩擦は次々と新しい材料が飛び出し先が読めない展開であり、そこへシリアへの武力行使を巡る不透明感で中東情勢も緊迫度を高めるなかで、「マーケットが落ち着きつつある」というのは意外感があるかもしれない。

昨日の「広木隆のMarket Talk」で視聴者から「日米株式市場の連動性が落ちてきているのでは?」と質問をいただき、その通りですと回答した。

実際のところ、先週金曜日の米国株式市場でNYダウ平均は570ドル超の大幅安を演じたが、それを受けた週明けの東京市場、日経平均は朝方こそ売られたものの、その後切り返し、結局110円高と3桁の上昇で終えた。金曜日のNY株安の要因だったトランプ大統領が中国に対する追加政策1000億ドルの検討というのは、すでに東京時間に伝わっていたからだ。金曜日の日経平均はその前日(木曜)のNY株の大幅高を反映できずに下げていた。すでに織り込み済みだったということだ。

火曜日のNYダウ平均は反対に428ドルと大幅高。しかし、これを受けた水曜の日経平均は100円超の下げ。NYの大幅高となった材料、習近平・中国国家主席の発言は前日の東京市場で伝わっており、それを受けてその日の日経平均は100円高と続伸した。本来なら前日のNYダウが一時440ドル高まで上げながら引けは40ドル高と失速した引け味の悪さで軟調な展開となるところだった。

このように「織り込み済み」という反応で、NYのボラタイルな値動きに振り回されることがなくなってきた。これは相場がだいぶ安定してきたことの表れである。

シリアを巡る緊張もすでに水曜日の相場で織り込んでいて、木曜日のNYダウ平均が200ドルを超える下げとなっても昨日の日経平均は朝方の下げを埋めて小幅安で終わった。そして今日は素直にNYに追随して一時は200円超上昇した。これは自然な動きである。

ドル円も同様で、これだけ多くのニュースがあった割には、この1週間、106円台半ばを割り込んでいない。107円を中心としたレンジの動きだ。

このまま決算シーズンに突入し、市場の注目は企業業績に移っていくだろう。小売業の2月決算のオオトリを飾ったファーストリテイリング(8月決算の中間期)、そして今回から2月決算に決算期変更となったが注目セクターの代表でいまだに「決算発表の先陣切る」イメージの強い安川電機、ともに好決算を発表した。2月に始まった相場の動揺も今月で3カ月に入る。「小回り3カ月」という相場の周期からいっても、そろそろ収束へ向かうタイミングだと考える。