いつもはメルマガ「新潮流」で今週のマーケット展望をお届けしているが、今週月曜日が祝日のため休刊だったので、「ストラテジーレポート」でフォローする。

米国雇用統計の発表を過ぎた今週は材料難で、膠着感の強い展開となりそうだ。焦点は、例によって為替だけがおかしな動きして円高に振れた分をどこまで戻していけるか、という点だ。現在、短期的には基調はドル高円安なので、その流れが再び強まるかどうかが鍵である。

9月22日のブログ「FOMCを終えて 円高だけがおかしい」でも書いたが、為替だけが一人勝手な動きをすることが結構ある。先週末に発表された雇用統計を受けての反応もそうだった。雇用統計は微妙な内容だったが、少なくとも12月利上げの可能性を排除するものではなかった。

FF金利先物市場が織り込む利上げ確率を示すCME FEDウォッチによれば、12月の確率は65%で変わっていない。雇用統計発表直後の条件反射的な短期的な売買一巡後、米国株も米国金利もほとんど動きなしだった。

ドル円だけが前日比1円も円高に振れ、1ドル=102円90銭~103円ちょうどで取引を終えた。しかしこれには少し事情がある。週明け10日は日本市場が体育の日、ニューヨーク市場がコロンバス・デーの祝日で為替・債券の取引はない(米国株は取引が行われる)。日米とも3連休を控えてポジション調整の動きが加速した面があろう。

さらに言えば、それまでドル円はニューヨーク市場で8日続伸、8日連続陽線だった。

これだけ連騰が続けば、日米の3連休を前に利益確定売りが出るのは道理であろう。ちなみに、ドル円の8連騰というのは2014年7月18日から31日にかけて記録して以来のことである。2014年7月と言えば、9月28日のブログ、「悲観の中に生まれる」で述べた日経平均の13週26週のゴールデンクロスが示現した時だ。2014年7月には、日経平均の13週26週の移動平均がゴールデンクロスを達成し、ドル円相場が8日続伸を記録した。その後は日経平均は2万円を超える水準まで上昇する大相場となった。さらに言えば、その前に日経平均の13週26週のゴールデンクロスが示現した2012年10月にもドル円相場は10月11日から22日にかけて8日続伸を演じている。その一か月後の2012年11月がアベノミクス相場のスタートラインとなった。

まあ、そういうテクニカル的な面もあって、先週末は比較的大きな押しとなったドル円相場だが、所詮、テクニカルな押しなので、テクニカルな節目で引っかかっている。一目均衡表の雲の上限に絡む動きだ。ドル円相場は、この雲を今年初めて抜けたばかり。雲のうえに明確に出ようという動きは続くだろう。

たいした材料はあまりないが、10日のユーロ圏財務相会合、12 日のFOMC議事録公表、13日の9月の中国の貿易収支、 14 日に発表される 9 月の米小売売上高くらいが注目か。その他、FRB高官による講演では、11 日にシカゴ連銀総裁、12日にカンザスシティー連銀総裁、13日にフィラデルフィア連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁、14 日にイエレン FRB 議長、ボストン連銀総裁の講演が予定されている。

繰り返しになるが週を通じてどこまでドル高円安基調を取り戻していけるかが今週の焦点。あくまでもトレンドの確認ができれば上出来なので、日経平均も上値追いはなく、上値17000円-下値16500円のレンジ内推移にとどまるだろう。

全体的な煮詰まり感から、個別材料に向かいがちで、特に今週はソニーのPSVR発売(13日)に注目が集まるが、逆に目先材料出尽くしとなる可能性もあるだろう。「PSVR発売で」即、利益が生まれるわけではなく、「PSVR発売から」スタートするのだから。

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チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから