自動車株が冴えない。先週、日経平均は15年ぶりに2万円の大台を回復したが、そのけん引役は金融株である。月初来の業種別リターンを見ると、金融業が上位に並ぶ一方で、自動車や機械などはワースト10に入っている。ワースト1位が精密であることに集約されているが、ユーロ安の影響が見て取れる。

昨日はマツダが5日ぶりに大幅反落。一時、前週末比90円50銭(3.6%)安の2402円まで下落した。前週末24日、2016年3月期の純利益が前期比12%減の1400億円になる見通しと発表。最終減益の見通しに加え、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの1637億円を大幅に下回ったことを嫌気した売りに押された。マツダは欧州やロシアへの輸出が多い。同じ理由で三菱自動車も大幅に続落した。2016年3月期の営業利益が前期比8%減の1250億円になる見通しだと発表した。営業減益は09年3月期以来7期ぶり。QUICKコンセンサスも大幅に下回った。

マツダの株価を見るとユーロ相場に連動していることが明らかである。

では、トヨタの株価が冴えないのはどうしてか?トヨタにとってはユーロ安やルーブル安の影響は軽微であるはずだ。確かに為替差益・差損の影響は発生しない。しかし、グローバル・ポートフォリオ運用を手掛ける外国人投資家の選択肢から外されるという点では、やはりユーロ安の影響を受けているのである。グローバル・ポートフォリオ運用を手掛ける外国人投資家は、自動車セクター内で銘柄選択をする場合、ユーロ安の恩恵を受ける欧州の自動車株を選ぶ。アベノミクス相場の初期段階で、円安転換を好感して日本の自動車株が軒並み買われたのと同じことである。日経平均採用銘柄の2013年の年間上昇率でマツダはほぼ倍となって2位、6割上昇した富士重が4位となった。それと同じことが今の欧州の自動車株に起きている。

日本・欧州・米国を統合した自動車株のユニバースで上昇率ランキングを見ると、欧州の自動車関連企業が軒並み上位を独占している。

日本の自動車株が欧州企業に割負けている理由がユーロ安であるならば、ユーロの反転が日本の自動車株浮上の鍵となるだろう。

ユーロ安の主な要因はECBのソブリンQEによる欧州金利のマイナスである。これはもうかなりいい水準にきているので、これ以上マイナス幅が拡大するとは思えない。もうひとつ、ユーロ安を誘発しているギリシャ問題だが、ギリシャ政府が債務交渉チームを再編したことで支援合意に至る可能性が出てきた。

ユーロ・ドルは、1ユーロ=1ドルというパリティはさすがに大きな節目なので、その直前でもみ合う動きが続いてきたが三角保ち合いを形成してどちらかに放れそうな状況。これまでは、一目均衡表の雲がユーロの上値を抑えてきたが、足元では雲の中に入ってきた。もしもユーロがこの雲を上に抜けると、景色が変わる。ユーロ安の一服感が広がるだろう。それは当然、ユーロ安を前提として組まれてきたポジションをすべてアンワインドする動きにつながる。

その場合、日本の自動車をはじめとするグローバル製造業の巻き返しも示現する可能性が高い。

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