個人的な話になりますが、先月、証券業界では私の憧れの方でもありましたある方がお亡くなりになりました。お付き合いは短かったのですが、いろんなことを学びました。その方とはある協会で研究会を運営しておりまして、私はその研究会の幹事をやらせていただいておりました。当然、私も証券界の経験がありましたので、その方のお名前や相場の分析手法などは有名で存じ上げていたのですが、実際にお会いするきっかけとなったのがその研究会です。
 話には聞いていたように、すばらしい人でした。相場分析に関しては当然のこと、モノに対する考え方や人生観など、会うたび、会うたびが勉強でした。ご自分の技法を他人に伝授することを惜しまない、年下の私たちにも十分に目線を下げてお話のできる方でした。
 私が初めて話しかけたのが、"私もテクニカル分析を仕事としてやりたいのですが、どうしたらいいですか"、と質問した覚えがあります。その返事も記憶が定かではありませんが、"僕もやりたいことをやるのに20年かかったよ"、こんな返事だったような記憶が残っています。また、2001年の米国同時多発テロのあとしばらくしてから、東京でもいくつかのビルが狙われている、先生の所属していた会社が危ない、といった噂が出た時に何をしていたかと、質問したことがあるのですが、その時は手書きデータのノートを抱きながら逃げようとした?逃げた?はっきりと覚えていないのですが、そんなことを言われた記憶があります。でも、手書きのデータは凄いですね。かなり昔からのものでしょう。

 先日、知り合いの方と、亡き先生の話をしておりました。随分前ですが、ワシントンでテクニカルアナリストの世界大会があったときに、一目均衡表の話を先生が披露されたあとに、外国人が周りを取り囲んで質問攻めにあったそうです。それだけインパクトのある技法だったのでしょう。
 まだまだご教授いただきたかったのですが非常に残念です。日本のテクニカル分析の歴史に残る人物ですよ。証券界や協会にとっても非常の惜しい人を亡くしてしまいました。現在の相場をどのように分析されていたでしょうか。
 さて、今回の題名とは話はガラッと変わりますが、10月は金融危機への懸念が一旦は緩和すると思われましたが、予想に反してより深刻な状況に陥ってしまいました。売りが売りを呼ぶ展開となり大幅に評価損が拡大。次々と大台が切り下がる株価ボードを前に翻弄され、ポジション調整の売りを余儀なくされました。日経平均は月初の始値11396円から28日のザラバ安値6994円までは4400円超の下落となり、25日移動平均線からのマイナスかい離は28.4%。200日移動平均線からのマイナスかい離は44.5%に拡大しました。
 "押し目待ちの押し目なし"と言うぐらい強い相場ほど調整は浅い。2003年4月安値7603円をあっさりと下回ったことで、昨年7月高値(終値ベース)が、バブル崩壊後の下落過程における単なる戻り高値であった可能性を想定する必要が出てきたのですが・・・。
 一方で、10月28日のザラバ安値6994円は日柄面と値幅予測上では重要なポイントでありました。日柄面では2006年6月安値から2007年8月安値までの294日間を、2007年8月安値から対等させた日柄が「10月28日」。また、値幅予測値としても2008年6月高値から7月16日安値までの下げの三倍を7月16日安値からさらに下げると6881円(4層倍の考え方)となり、28日ザラバ安値とほぼ一致します。よって、短期底入れとなった可能性もあり、今後数ヶ月単位で戻り相場が形成されることを期待しています。
 さらに、10月は月足ローソク足で長い下ヒゲを形成しました。最終日の下げでヒゲの長さが短くなってしまいましたが、"底入れかな"と思わせる足です。11月は10月安値6994円を下回らなければ、下落が続いた月足均衡表の転換線がいよいよ横ばい(10798円)になる。基準線も12647円で横ばい、雲下限レベルと同水準。
 特に、転換線の10798円は2004年前半から2005年前半にかけての長いレンジ相場の下限レベルと一致します。戻りのメドとしては大きな関門になるでしょう。
 仮に下値を切ってくる可能性があったとしても、まずは中勢的に大きな戻りがあると想定するのが自然ではないでしょうか。2010年2月あたりが月足ベースの大きな変化日と見ています。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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