米国は340億ドル相当の中国からの輸入品818品目に25%の追加関税を課した。中国も即時に同規模の報復に踏み切り、メディアは「貿易戦争の始まり」と報じた。その貿易戦争の開始時点にリアルタイムで動いていた日本株相場は反発。日経平均は一時300円以上に上げ幅を広げる場面もあった。典型的な材料出尽くしと週末を控えたポジション調整の動きとなったが、米中貿易摩擦に対する過剰な反応が見られなかったことは、ひとまず安心できる。

欧米市場も堅調だった。一番、心配だったのはこのところのダウ平均の動きだった。しかし2万4000ドルの節目を保ってもちこたえた。200日移動平均や一目均衡表の雲の下限を大きく下放れてしまう懸念があったが、ここで切り返し、逆に75日移動平均と200日移動平均の三角保ち合いや、雲の上限を上放れる兆しも出てきた。今週はその上放れに向けたもみ合いをしばらく続けると見る。今週の位置づけは、独立記念日、関税発動、雇用統計といったイベント満載だった先週と、来週から始まる決算シーズンとの端境期で小休止といったところか。

今週末金曜日からJPモルガン・チェース(JPM)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、シティグループ(C)など銀行大手を皮切りに米主要企業の2018年4~6月期の決算発表が本格化する。投資家は貿易戦争の影響が決算発表にどう反映されるかを見極めようとするだろう。決算発表前の積極的な物色は手控えられるだろう。

そんななか、先週金曜日の米国市場ではバイオジェン(BIIB)のアルツハイマー病新薬候補が臨床試験で有意な結果を示したため、バイオテクノロジー関連銘柄を中心に買いが入った。ナスダック・バイオテクノロジー指数は3.7%高と急騰した。これに先立って日本株市場でもこのニュースでエーザイ(4523)がストップ高となっており、この効果は今週も継続するかもしれない。

なんといっても米中を巡る貿易戦争が相場の重石となり続けるが、緩和の兆しも見えている。米通商代表部(USTR)は発動した中国への制裁関税を巡り、特定の製品を対象から外す手続きを実施すると発表した。企業などの申請を審査し、中国以外の国から調達しにくい製品を除く。関税による国内経済への悪影響を考慮するのは当然である。中国商務省は「340億ドルのうち200億ドル分は外資の中国製品。米企業はそのかなりの比率を占める」と指摘している。中国という特定の国を狙い撃ちにした関税も結局は米国の利益を損ねるということが明らかになるにつれ、貿易戦争も次第にトーンダウンすることが期待されるが、それにはしばらく時間がかかるだろう。

日本では9日に6月景気ウォッチャー調査が発表される。5月の先行き判断DIは50 を再び下回り14ヶ月ぶりの低水準となった。原油や原材料価格の上昇により、消費者マインドが悪化している。持ち直すかどうか。11日は機械受注が発表されるが、こちらは堅実な設備投資需要を背景にしっかりした内容が期待される。海外では13日発表の中国の貿易統計と12日発表の米国のCPI(消費者物価指数)が注目される。

最後に、イランによるホルムズ海峡封鎖など中東での緊張が高まっていることをリスクとして指摘したい。イラン革命防衛隊高官は先週、米国がイラン産原油の輸入を停止するよう各国に圧力をかければ、ホルムズ海峡を通過する原油輸送を阻止する可能性があると警告した。これに対し米海軍は航海の自由と通商の自由な流れを確実に確保する用意ができていると述べるなど、中東での緊張が高まっている。軍事的な衝突がなくても原油価格が急騰しやすい素地がある。米中貿易戦争のかげに隠れて市場の警戒が薄いだけに足元をすくわれないように配慮したい。

予想レンジは21,500~22,000円。22,000円の大台回復を期待したい。