目下のところ相場の最大の材料は28日におこなわれるトランプ大統領の議会演説である。それまでは大きく動きにくい。今週は特に主だった材料もなく、手掛かり難からもみ合いとなるだろう。20日の米国株取引はプレジデントデーで休場となるため週初は一段と動意薄になりやすい。日経平均は、25日移動平均や一目均衡表の雲の上限が重なる19,100円程度が下値目途。上値は19,500円という節目の重さが意識される展開となるだろう。

上記の下値目途を抜けるとすれば、為替市場で一段と円高が進む場合であろう。その場合、一時的に19,000円台を割ることもあるが、19,000円割れでは押し目買いが入り深押しはないだろう。冒頭で述べた通り、トランプ大統領の演説では、先般の「驚くような」減税策をはじめ、市場が期待する経済政策に言及すると思われ、そのような重要イベントを前に売り方も売るに売れないからだ。売りであろうと買いであろうと短期のポジションは結局28日の前に手仕舞わざるを得ない。よって今週は一方向に傾かない。下げれば買い戻しが入り、上げれば利食い売りが出る。

材料不足のなか注目は22日に公表される1月31日、2月1日開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録だろう。但し、先週イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の上院銀行委員会での証言がタカ派的なトーンだったことを受け為替市場は一時的にドル買いで反応したものの、結局円高方向に振れている。FOMC議事録は円高が一服する「きっかけ」程度にはなるかもしれないが、大きく水準は変わらないだろう。

レポートでも書いたが為替市場の円高進行が不可思議である。米国株式市場では主要指数が連日高値を更新し、米国以外の株式市場も軒並み高値圏にあるなか、為替だけが、例えば欧州の政治リスク等でリスク回避に動いているというのは理屈がたたない。欧州の選挙で極右政党誕生、ユーロ崩壊の危機が懸念されてリスクオフになっているなら株式だって買えるわけがない。

先週発表された米国の経済指標は軒並み強かった。1月の米消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%上昇と市場予想を上回り、小売売上高も堅調。フィラデルフィア連銀・製造業景況指数に至っては33年ぶりの高水準だ。それにもかかわらずドルが売られ円高が進んでいる。為替市場は何に反応しているのだろうか。北朝鮮リスクの高まりを織り込んでいるのなら幾分か合点がいく。リスク回避で円高になるのは「パブロフの犬」的な反射だから。それでもなお、東アジアの地政学リスクの高まりで円買い、というのは、やはり理解に苦しむ。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆