アメリカ下院の共和党首脳はトランプ政権が成立を目指していた医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)を撤回した。メディアはいっせいに「トランプ大統領の敗北」「政権に打撃」と報じているが、市場にとっては好材料だ。市場が待ち望む税制改革の議論に早期に着手することができるからだ。このトランプ大統領の変わり身の速さはビジネスマンの面目躍如だろう。

先週金曜日の米国市場でダウ平均は一時120ドル超下げた。採決直前になってトランプ米大統領とライアン下院議長が会見中と報じられ、代替法案の可決に不透明感が強まったからだ。ところが取引終了の約30分前に代替法案の採決が見送られると伝わると、ダウ平均はその報道を受けて下げ幅を急速に縮めた。オバマケアはわきに置いて、減税策など主要な経済政策の審議は進むと楽観的な観測が台頭したからだろう。

今週は、年度末に当たり、配当落ちやその再投資などいろいろテクニカルな要因はあるが、基本的に大きな材料にはならない。むしろ新年度入りしたあとの国内金融機関による益出しの売りが懸念される。昨年の4月1日は日経平均で600円安の暴落となった。今年は年度内、実質新年度入りする29日以降から警戒しておいたほうが良いだろう。

今週の日経平均の予想レンジは19,000~19,600円とする。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆