かの著名な大投資家、ウォーレン・バフェット氏が、世界的な問題となっているサブ・プライム問題に関連して、”モノライン”と呼ばれる金融保証
会社を救済する提案をしました。モノライン各社は、サブ・プライム・ローンの証券化商品に対する保証を多くしており、これがモノラインの経営を大きく揺るがしていることは、新聞各紙にも多く報道されており、皆さんも御存知のことと思います。
このモノライン各社、サブ・プライム・ローンの証券化商品だけでなく、アメリカの個人が貯蓄代替商品として多く買っている地方債(州政府債など)にも多額の保証をしています。モノライン各社の経営が破綻し、この地方債にまで問題が広がると、サブ・プライム・ローンの証券化商品を買っている機関投資家の問題だけでなく、広く個人の家計にまで直接問題が波及します。
この点が心配されていた訳ですが、バフェット氏が、モノライン大手3社の地方債保証債務8000億ドル(約86兆円!)を一手に引き受けるとの提案をしたのです。保証に対する再保証のようなものです。そしてその為に、50億ドル(約5400億円)の資本を用意したとのこと。
このニュースを受けて昨日のアメリカ株式市場は反発しました。然しながらこの提案を既にモノライン1社は拒絶した為、またあくまでもサブ・プライム問題の中ではもっとも本質的なダメージが小さい部分の話である為、
”バフェット効果”は限定的であるとの意見もあるようです。
しかし私はそうは思いません。金融の問題(と云うかなべて”大きな問題”と云うもの)は、全てを一気に解決することは大変です。不可能といっても良いでしょう。金融に於いては、簡単なところから先ずは直していくことが、コスト効率良く全体の問題を解決していくのに有効であることが、
過去の例から概ね分かっています。
どこかからでも問題が直っていくことを見ると、リスク・テイカー(投資家)の不安感が減少し、金融的なコストが減るからです。バフェット氏の提案はそう云う意味で、まさに的を射ています。更に、多くの人が心配していたこのモノライン−地方債問題が、5000億円強の資本で一括解決できることを明らかにしたことは、大変重要です。
仮に全てのモノラインがこの提案を受け入れなくても、市場全体の”不安コスト”は減ることでしょう。
恐らくバフェット氏は以上のように考え、且つ彼にとってもいいビジネスになり得るので、斯様な提案をしたのだと思います。
建設的で、賢いアイデアです。バフェット氏の賢い知恵とアメリカの資本市場に対する情熱が、一連の問題を収束に向かわせる触媒となってくれることを願います。