この時期、街はむせぶような若葉の匂いに充ちてきます。毎年あの匂いを嗅いで、夏がそこまで来たことを知ります。しかしあの匂いには不思議なこともいくつかあります。先ず、なに故にあれほど強い匂いがするのでしょう?
花が匂うなら分かります。交配する為に昆虫を呼び寄せる必要があるでしょう。しかし、たかが葉っぱです。自然界の事は大概必然性があるものですが、若葉が強く匂う必然性が分かりません。
次にあの匂いがどのように日本に於いて受け止められてきたかです。古今集などでも、花の香や、袖の香は詠まれていますが、「葉の匂い」についての歌は記憶にありません。仄かな香りは愛でても、強い匂いは忌み嫌ったのでしょうか。谷崎の陰翳礼賛ではありませんが、強過ぎないもの、直接的でなく間接的に想像させるものなどに対して美を感じる意識は、我が国の一つの特徴でしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。