先週(8月31日週)の振り返り=週半ば以降、米ドル/円は一時155円台まで急反落

158~160円のレンジ下放れで下落が拡大=米ドル/円

先週(8月31日週)の米ドル/円は、前週末8月28日のウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「ジャクソンホール発言」を受けた米早期利上げ観測再燃により、160円以上に上昇した水準での取引スタートとなりました。しかし週半ば以降下落に転じると、一時は155円近くまで急反落しました(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2026年6月~)
出所:マネックストレーダーFX

このように米ドル/円が急落に転じた一因は、それまで続いてきた小動きのレンジから下放れたことにあるでしょう。米ドル/円は8月中旬から半月余り、158~160円中心の小動きが続いていました。それを、上述のようにウォーシュ「ジャクソンホール発言」をきっかけとして上放れる可能性が出ていましたが、一転158円割れで逆に下放れとなったことから下落が加速したと考えられます。

円高の理由は日銀利上げ期待の金利差縮小だったのか?

米ドル/円がレンジを下放れたのは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小が手掛かりになったようにもみえます。先週(8月31日週)は、日銀審議委員の「タカ派」発言や、ベッセント米財務長官による「日本に円高になる政策を期待する」との発言、日銀の利上げを期待する発言などから、改めて日銀の早期利上げ観測が強まり、そうした中で日米金利差は大きく縮小しました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米金利差(2026年4月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただ、時間軸を拡大し、米ドル/円と日米金利差の関係を見ると、1年以上前から両者のかい離は大きく広がりました。日米金利差の縮小を尻目に米ドル高・円安が広がってきたわけです(図表3参照)。その意味では、先週(8月31日週)から急に金利差縮小に円高で反応したというのは少し無理があるようにも感じられます。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「長期金利上昇=円安」の流れが反転

このように金利差で説明できなくなった米ドル高・円安は、日本の長期金利上昇に連動したようにみえました(図表4参照)。日本の長期金利、10年債利回りは先週(8月31日週)ついに3%の大台を突破しましたが、これは高市政権の積極財政に対する財政規律への懸念の影響が主因との見方が多いようです。

【図表4】米ドル/円と日10年債利回り(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ところが、そうした長期金利上昇は、10年債利回りが3%を超えたところで一服し、先週(8月31日週)後半は比較的大きく低下しました。以上のように見ると、先週(8月31日週)一時155円近くまで円高に転じたのは、長期金利が低下に転じた影響が大きかったということではないでしょうか(図表5参照)。それではなぜ、「長期金利上昇=円安」の流れが反転したのでしょうか。

【図表5】米ドル/円と日10年債利回り(2026年7月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ベッセント「リフレを止めるべき」=内閣改造人事観測は財政規律維持の示唆?

先週(8月31日週)、ベッセント長官は、「円高になる政策を日本に期待する」と発言し、日銀の利上げへの期待とともに、「日本はリフレ政策を止めるべき」といった考え方も示しました。これは消費税減税や上限を撤廃した概算要求などの高市政権による積極財政政策へのけん制と見られます。

そうした中で、近く予定されている高市内閣の改造で、自民党の麻生副総裁、鈴木幹事長などの元財務大臣、そして片山現財務大臣が留任する可能性が高いという報道が流れました。これは、ベッセント長官からの積極財政へのけん制に対して、高市総理が財政規律を維持するメッセージを返したものではないかとの見方が一部で囁かれました。以上のように、この間の「長期金利上昇=円安」の流れが先週反転したのは、財政規律への懸念が一服した影響が大きかったのではないでしょうか。

今週(9月7日週)の注目点=レーバーデイ明けでトレードが本格化し、一方向に大きく動く可能性が高い

高市リフレの見直し=「長期金利上昇=円安」転換の鍵

高市内閣の改造では、一時は鈴木自民党幹事長や片山財務大臣などの財務省に近いと見られる人物を交代させることで、より積極財政など高市総理の肝いりの政策を進めやすい体制を強化する可能性も取り沙汰されていました。しかしこれまで見てきたことからすると、その可能性は後退したのかもしれません。それには協調介入により円安阻止に強く関与したことで、米政府が金融・財政政策にも干渉を強めた影響がやはり大きいということではないでしょうか。

ただ「責任ある積極財政」は、高市政権の最重要政策の1つであるため、リフレ政策をどこまで見直すかはまだ不透明でしょう。その見極めが、高市政権発足以降続いてきた「長期金利上昇=円安」の流れが変わるかを考える上での鍵ということではないでしょうか。

今週(9月7日週)の米ドル/円は154~158円で予想

今週(9月7日週)は9月7日(月)がレーバーデイで米国市場は休場となりますが、例年レーバーデイ明けから実質的な夏休み明けとなり、トレードが本格化するため、一方向へ大きく動く傾向があります。では、155円割れで円高に向かうのでしょうか。それとも日本の財政規律への懸念などを背景とした「長期金利上昇=円安」の流れが再燃するのでしょうか。

米ドル/円の下値は、テクニカルには協調介入でも割れなかった155円台が引き続き注目されます。一方の上値は、先週(8月31日週)半ばまで続いたレンジ相場の下限、158円を回復できるかが分岐点でしょう。米経済指標では、翌週にFOMC(米連邦公開市場委員会)を控える中で、CPI(消費者物価指数)などインフレ指標の発表が注目されます。

9月4日に発表された米8月雇用統計で、NFP(非農業部門雇用者数)が予想以上に強い結果となったものの、米ドル/円は157円も超えられなかったところをみると、米ドル/円の上値が重くなってきた印象もあります。すでに述べた上値の目途である158円を超えられないようなら、ゴールデンウィークの米ドル売り介入再開以降もサポートされてきた155円台を割り込む動きになる可能性もあります。その考えから、今週(9月7日週)の米ドル/円は154~158円で予想します。