「第3次石油危機」を経て、極端なまでの二極化相場が転換期に
7月になりました。早いもので2026年の株式相場も後半戦を迎えています。「半年が経過した」というカレンダー上の区切りは、株式市場ではそれまでの流れが変わる転機になりやすいものです。6月末に日経平均が史上最高値の72,000円を記録して以来、マーケットの物色の方向性が少しずつ変化してきたようにも見えます。
これまで強烈な上昇力を誇ってきたAI・半導体関連株の上値がさすがに重くなり、それに代わって年度初めからまったく不人気だったバリュー系の銘柄に底堅い動きが目立ってきました。これまでの極端なまでの二極化相場が転換期を迎えているかのようです。
そのきっかけの一つとして、米国とイランの和平合意が挙げられます。世界を驚愕させた米国・イスラエルによるイランへの空爆、武力衝突の開始、歴史上初めてのホルムズ海峡の封鎖が行われ、「第3次石油危機」とも称される全世界が直面した地政学上の激震は、紆余曲折を経てかろうじて和平合意に至りました。
まだ細かい停戦交渉の詰めの部分は残されていますが、それでも米国は予定通り、7月4日に建国250周年を祝う大規模な式典を挙行しました。同じ日にイランでは故ハメネイ師の国葬を行いました。
中東和平を受けて、マーケットは新しい未来像を織り込み始める
2026年前半の世界経済および株式市場は、2月28日のイスラエル・米国によるイラン爆撃に端を発する原油価格の急騰、石油供給の途絶による原材料価格の上昇、ナフサやエチレンなどのサプライチェーンの混乱や物価の上昇、長期金利の上昇といった企業経営を根底から揺さぶる数々のネガティブ要因にさらされました。
このような厳しい経済環境の中でも企業収益を伸ばすことができたのは、半導体、データセンター、AIサーバー、電力インフラといった、ひと握りの銘柄群でした。ハイパースケーラーの膨大な設備投資に支えられて、「AI関連株しか利益が伸びない」という状況下で際立った利益拡大を実現できたのがまさにこれらの企業です。
中東和平を受けて、マーケットは新しい未来像を織り込み始めています。すなわち、AIだけではなく世界全体の設備投資が戻ってくる、という構図です。7月1日に発表された日銀短観(2026年4-6月期)では、2026年度の設備投資は大企業・全産業で前年比+11.5%の計画となっています。製造業、非製造業ともに2ケタの伸びとなっており、企業は設備投資に関しては明確に前向きなスタンスです。
出遅れ銘柄、大規模な成長投資や設備投資を実行する可能性が高い
企業経営者の立場に立つと、2026年前半に見られた極端な物色の二極化の中で、「日経平均が史上最高値をつけたのに、わが社の株価はちっとも上昇していない」という冷厳な現実が突きつけられています。
実際に2026年の5~6月に集中的に開催された株主総会では、そのような株主からの不満が経営陣に対して数多く寄せられたという話題を耳にします。日経平均が空前絶後の高値を更新する一方で、自社の株価は完全に取り残されてしまった企業の経営者はどのように考え、行動するでしょうか。
このような企業は今後、成長を取り戻すべく、大規模な成長投資や設備投資を実行してくる可能性が高いと考えられ、それはすでに始まっています。企業はまず政策保有株を売却し、ROEを高め、PBRの改善策に取り組むことになります。その上で成長投資、設備投資などの事業ポートフォリオの再編に踏み込んでくると予想されます。
出遅れていたセクターや銘柄にも株価の修正が起こってくると予想
東証プライム市場に上場する企業の9割以上が「資本コストと株価を意識した経営」に取り組んでいます。これは経営者が明らかに経営改革に関して市場からのプレッシャーを感じていることの表れです。
積極的な設備投資計画は、単に古くなった設備の更新にとどまらず、株価を上げるための成長投資に向かうと考えられます。データセンターへの投資は言うに及ばず、工場の自動化や製造拠点の国内回帰、物流網の再構築、低採算事業の売却、政策保有株の売却による成長投資原資の捻出、そしてM&Aです。
高市政権は2040年度に向けて、官民合わせて370兆円を超える投資を呼び込む方針を示しています。政策サイドもタイミングよくこのような企業活動、経済の流れを後押ししています。
設備投資は今後も重要なテーマになってくると考えられます。そうなると二極化相場が続いた結果、出遅れていたセクターや銘柄にも株価の修正が起こってくると予想されます。機械セクターをはじめ、物流、自動車部品、化学、商社、金融、建設、設備工事、重電などが魅力的でしょう。
復調が期待されるバリュー株4選
UBE(4208)
かつての宇部興産が2022年にセメント事業を分社化して変身。2028年3月までに日本でのアンモニア・カプロラクタム・ナイロンポリマーなどベーシック事業の生産縮小・停止を予定。事業の柱をナイロン原料のカプロラクタム、ポリイミド(有機ELの回路基板)、分離膜、セラミックス、セパレータにシフトする。これらの戦略分野の生産能力を増強し、2030年にROEで8%以上、スペシャリティケミカル企業への変貌を目指す。
ジェイテクト(6473)
世界で初めて自動車用の電動パワステを開発したことで知られる。現在でも電動パワステを中心に自動車・産業機械向けのベアリング、工作機械が収益の3本柱を構成。光洋精工と工作機械の豊田工機が合併して2006年に誕生。研削盤・切削機・NC装置の工作機械、自動車部品も手がける。自動車生産は今がボトムと見られる。工作機械が好調で今期は3年ぶりの増益に。一気に最高益更新の見通し。
ヤマハ発動機(7272)
二輪車では世界トップクラス、船外機でも世界有数のブランドを確立。モーターサイクルで培った技術を軸に、パワートレイン、車体・艇体、制御、生産の4つのコア技術で世界に君臨。それぞれの技術に独自のソフトウェアを付加して知能化を進める。技術開発ではトヨタ自動車(7203)と提携。自動運転開発ベンチャー「ティアフォー」に出資しており、産業ロボット、電子部品実装、半導体後工程装置など先端分野にも意欲的。
因幡電機産業(9934)
電線ケーブル、配線器具などを扱う独立系商社。2038年に創業100年を迎える。電設資材では国内トップ企業。半導体向けのセンサー、制御機器、電子部品も扱う商社機能も有する。エアコン向けの空調配管化粧カバー国内シェア6割を有する。オフィスビルやデータセンター建設が盛んで業績は拡大基調。前期で5年連続の最高益を達成し、売上高で4000億円、経常利益で300億円に到達した。配当性向50%で株主還元にも積極的。
