デフレの終焉とインフレ経済への転換点(2022年~2025年)
物価の上昇が絶え間なく続いています。デフレの時代がはっきりと終わりを告げ、私たちはもはやインフレの時代に生きていることを覚悟しなくてはならない状況にあります。この記事ではインフレ時代に値上げができる企業、価格決定力のある企業を探していこうと思いますが、前段では、最近の物価上昇の傾向を見ておきます。
日本が長く続いたデフレの時代からインフレ経済に移り始めた分岐点は2022年だったように思います。2022年から2023年にかけて、新型コロナウイルスの蔓延に対抗して経済活性化策が打ち出され、日米ともに大規模な財政支出が講じられました。
家計や企業に対して大量の資金が供給され、その一方でサプライチェーンは目詰まりを起こしており、物流の混乱、コンテナ船の不足、折しも勃発したウクライナ戦争による原油と天然ガスの高騰などが重なって、モノの供給量が不足するコストプッシュ型のインフレが発生しました。
続く2023年後半から2025年にかけては、エネルギー価格は落ち着いたものの、日本では30年ぶりとなる春闘での5%台の賃上げが実現しました。人件費の上昇が消費者物価へと転嫁されるようになりました。このあたりではっきりとデフレは終焉したものと考えられます。
食品メーカーが相次いで値上げを発表したのがこの時期です。ホテルや外食ビジネス、建設業界、介護サービスなど、労働集約型の産業が相次いで価格改定を行い、日本中で賃金インフレが一気に沸き上がりました。
生成AIブームが直撃。半導体不足による家電の「値上げ」時代
そして現在です。2025年後半から生成AI向けのデータセンター投資が世界中で爆発的に増えており、先端半導体を中心にメモリ製品の不足状態が慢性的なものになっています。
半導体メーカーはAI向けに限られた生産能力を集中させており、そのあおりでパソコン、ゲーム機、スマホ向けの半導体が品不足に陥っています。アップルでさえ新型iPhoneやMacの値上げを検討しています。
民生用家電製品はこれまで値下がりすることはあっても、値上がりすることなど考えてもみませんでした。しかしこれからは電子部品の価格や人件費を通じて家電製品の価格も上昇する時代を迎えるかもしれません。
中東情勢の緊迫化と「三方面からのインフレ圧力」
2026年に入って米国とイランとの間で武力衝突が起こり、ホルムズ海峡の封鎖が初めて現実のものとなりました。中東産原油の積み出しが完全に途絶え、原油由来のナフサなど石油化学原料の供給不安が世界規模で発生。「第3次オイルショック」と呼ばれるほどの事態に発展し不安心理が世界中を覆っています。
企業活動の現場では、一部でコロナ禍以来の物流の目詰まりが発生しています。同時に生成AIの周辺で膨大な設備投資によるモノ不足が生じており、目下のところ供給面、需要面、賃金上昇の三方面からインフレ圧力が高まっている状況に直面しています。
いずれの要因もすぐに解消するというものではありません。少なくとも今後2年程度はAI、資源、人件費による構造的なインフレが続く可能性が高いと見られます。FRB(米連邦準備制度理事会)議長の交代した米国では年内の利上げ観測が次第に強まっています。
以下にインフレ時代を生き抜く「価格決定力」を持つ関連銘柄を取り上げます。
逆風を跳ね返す「価格決定力」に注目の日本株3選
東ソー(4042)
総合化学メーカー大手。塩化ビニール樹脂、苛性ソーダの大手で塩ビの生産量はアジア第3位。石油化学製品も幅広く展開しており、合成ゴムの原料であるブタジエン、ポリエチレンやスチレンモノマーの原料となるエチレンを古くから取り扱う。近年はファインケミカルが最大の収益源であり、パワー半導体用の窒化ガリウム、先端テクノロジーで多用される界面活性剤、排ガス触媒、歯科材料、免疫検査機器など、先端製品が収益の柱を構成している。
横浜ゴム(5101)
タイヤメーカー大手。国内の売上規模で第2位につける。海外市場は米国とアジアに重点を置く。プレミアムブランドの「アドバン」、オフロード・オンロード両用の「ジオランダー」、低燃費の「ブルーアース」など高付加価値タイヤを多数展開する。ゴルフブランドでは「プロギア(PRGR)」でも知られる。9月から国内の市販タイヤのメーカー出荷価格を5%引き上げ。合成ゴムなど原材料や物流コストの上昇分の吸収を狙う。値上げもあって今期も最高益更新の見通し。
ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)
車載用鉛電池のトップメーカー。世界でも第2位。産業用の鉛蓄電池は再エネや電源装置に展開しており、近年はビルのバックアップ電源が特に伸びている。保守サービスの収益貢献度が大きい。ハイブリッド車に搭載されるリチウムイオン電池はトヨタ、ホンダに供給。EV向け電池も着実に伸びている。8月より主力の自動車用鉛蓄電池を平均で20%値上げすると発表。鉛市況の上昇を反映させる。
