3月の振り返り=「中東有事」で米ドル高・円安拡大、160円台に

原油などの供給懸念で円売り=米金融政策は利下げから利上げへ見通し転換

3月の米ドル/円は大きく上昇し、3月27日にはついに160円の大台を突破しました(図表1参照)。おもに材料視されたのは、2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けた「中東有事」の発生でしょう。その後、イランがホルムズ海峡の事実上の封鎖に動いたことで、原油などのエネルギー供給懸念が広がり、日本は原油などの輸入依存度が高いため、円売り材料になったと考えられます。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2026年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

また、原油などの急騰により、世界的に物価高が進み、インフレ再燃への懸念が浮上しました。そして、金融政策を反映する短期金利、米2年債利回りも米国の政策金利であるFFレートの誘導目標上限の3.75%を大きく上回るまで上昇しました(図表2参照)。これは、それまでの「次の米金融政策は利下げ」といった見方から、「次の一手は利上げ」に転換した可能性も示したといえるでしょう。

【図表2】FFレートと米2年債利回り(2017年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

こうした中で米金利が上昇し、それを受けて日米金利差(米ドル優位・円劣位)が拡大しました(図表3参照)。では、「中東有事」を受け、さらに日米金利差の円劣位拡大などを受けた円安は4月以降も続くのでしょうか。

【図表3】米ドル/円と日米金利差(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

米国株安も拡大=中東要因は円売り、米ドル売りの両面あり

米国等とイランの双方による原油生産施設への攻撃により、原油供給の早期回復は困難になったでしょう。そうであれば、原油価格などの下落は限られ、高値圏での推移が続く可能性が高いのではないでしょうか。それは基本的には、米ドル高・円安を後押しした状況がさらに続く可能性を意味すると考えられます。

その一方でエネルギー価格の大幅な上昇は米経済にも悪影響を及ぼすとの見方などから、米国株の下落も広がりました。このように米国株安がさらに続くようであれば、米景気悪化への懸念から、物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーション懸念を理由に米ドルが売られる可能性もあるでしょう。

4月の注目点=円安阻止介入巡る動向は円、米ドルともに暴落リスク秘め

日本の介入は「行き過ぎ」を逆手に取ることを意識してきた可能性

米ドル高・円安が進み、1ドル160円を超えた状況が続き、さらに2024年7月に記録した161.9円も超えるようであれば、改めて日本の通貨当局による円安阻止を目的とした為替市場への介入が注目されることになりそうです。そこで、為替介入はあるのか、そしてそれは円安を止められるのかについて考えてみます。

日本の通貨当局は、2022年と2024年に為替介入を断続的に行い、最終的には円安の阻止と反転に成功しました。この介入を開始したのは、2022、2024年とも米ドル/円が5年MA(移動平均線)を3割程度上回った水準でした(図表4参照)。それ以前の為替介入は、2010~2011年の円高阻止局面で行なわれたものだったのですが、じつはこの時の介入開始も米ドル/円が5年MAを2割以上下回った水準だったのです。

【図表4】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2022、2024年の円安阻止、そして2010~2011年の円高阻止とも、米ドル/円が5年MAから2割以上と大きくかい離する中で介入が始まっていたのは、当局が介入を成功させるために相場の「行き過ぎ」もかなり意識していたことを示しているのではないでしょうか。

160円近辺の日本単独円安阻止介入は「失敗」のリスクあり

巨大な為替市場において、介入によって相場の流れを変えるのは困難でしょう。ただし、これまでの実績を見る限り、米ドル/円は5年MA±3割以上にかい離することは限られました。その意味では、米ドル/円が5年MAから2~3割かい離した水準は、「行き過ぎ」の限界圏の可能性がありました。当局は円安や円高を阻止する上で、そういった「行き過ぎ」を逆手にとることも意識してきた可能性があるのではないでしょうか。

では足下はどうかというと、160円でも5年MAを15%上回っている程度に過ぎません。これまでみてきたような「行き過ぎ」を逆手にとるという考え方からすると、足下の5年MAは140円程度なので、それを少なくとも2割以上上回る水準なら170円程度まで米ドル売り・円買い介入は行われず、それ以下の水準での介入は円安阻止に「失敗」する懸念があるのではないでしょうか。

日米協調介入なら一転米ドル暴落リスク=4月の米ドル/円は155~165円で予想

1月23日、米ドル高・円安が160円に迫る局面で、日本とともに米国の通貨当局も介入の前段階との見方が強い「レートチェック」に動きました。2024年までは日本単独の円安阻止が続きましたが、それが今回、円安けん制の「日米協調」となったのは、すでにこの時点で、160円程度での日本単独の円安阻止は困難との自覚が日米当局内にあった可能性を感じさせるものでしょう。では、早期に米ドル売り・円買いの日米協調介入が実現する可能性はあるのか。

1月23日、米当局も円安けん制の「レートチェック」に動くと、米ドルは円以外の通貨に対しても急落し、間もなくベッセント財務長官は米ドル売り介入の実施を否定した上で「強い米ドル政策」に変わりないことを確認するなど、事実上の米ドル安けん制を行いました。

米国が円安阻止のために実際の米ドル売り介入に動くのはやはり簡単ではなく、もし米ドル売り介入を行った場合は円安阻止以上に米ドル急落リスクが拡大する可能性もあるのではないでしょうか。

その意味では、160円近辺での日米の為替介入を巡る動向は、円と米ドルともに暴落リスクが現実化するきっかけになる可能性を秘めているのかもしれません。そういったことを踏まえ、4月の米ドル/円は155~165円で予想します。

今週(3月30日週)の米ドル/円は155~165円で予想

4月第1週となる今週は、3日に発表される予定の3月米雇用統計など注目度の高い米経済指標の発表が予定されています。また引き続き、イラン情勢や原油価格の動向、そして米国株安の動きからも目が離せない状況になりそうです。

そして、円安阻止の為替介入を巡る動きは、円安と円高の両方向で大きく荒れる要因になりそうです。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は157~162円で予想します。