2026年5月の振り返り=為替介入を受け、米ドル安・円高も「行って来い」に
米利上げ予想で日米金利差拡大=米ドル高・円安を後押し
日本のゴールデンウィーク(GW)中に、日本の通貨当局は約11兆円規模の米ドル売り・円買い介入を行ったようです。これを受けて米ドル/円は一時155円割れ寸前まで急落しました。ただし、その後は為替介入を開始したと見られた159円台まで米ドル高・円安に戻すところとなりました(図表1参照)。
155円台から159円台までの米ドル/円反発は、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)の拡大に連動したものでした(図表2参照)。日米2年債利回り差は2.5%程度から一時は2.7%以上に拡大、それに連動する形で為替介入後の米ドル安・円高も元に戻り、いわゆる「行って来い」の結果になったということでしょう。
日米金利差拡大の主因は米金利上昇ですが、その原因はインフレ再燃への懸念を受けたFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ予想でしょう。金融政策を反映する米2年債利回りは4%以上に上昇し、政策金利であるFFレート誘導目標上限の3.75%を0.25%以上上回りました(図表3参照)。つまり金利市場が先々の0.25%利上げを織り込んだということになります。
円安阻止で日米の利害一致=160円超の円安が限られる可能性
このように、インフレ再燃を懸念しFRBが利上げに転換することを織り込む形で米金利が上昇、それを受けた日米金利差拡大に連動することで米ドル/円はGW中に日本当局が為替介入を開始した水準まで戻りました。ではここからさらに160円を超えて、米ドル高・円安が一段と進むかといえば、それは懐疑的ではないでしょうか。
日本の当局は、基本的に160円を超える円安を容認しない方針と見られます。またこれまでの経緯を見る限り、円安阻止は日本だけでなく米国とも利害が一致しているようです。このため再び160円を超えるようであれば、日本単独の米ドル売り・円買い介入、さらには日米協調介入の可能性もあり、米ドル高・円安は自ずと限られる可能性が高いのではないでしょうか。
円安に投機円売りの関与が増加=損益分岐点割れなら円買いへ転換も
ここに来て米ドル高・円安に投機筋の米ドル買い・円売りの影響が大きくなってきた可能性があります。代表的な投機筋であるヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているとされる、CFTC(米商品先物取引委員会)統計における投機筋の円ポジションは、売り越し(米ドル買い越し)が4月以降10万枚前後に拡大しました(図表4参照)。
イランでの戦争が始まる前までは、投機筋の円売り越しは基本的に5万枚以下にとどまっていたのですが、イラン戦争が続く中でそれが大きく拡大し、円安の主因が、徐々に投機の円売り主導に変わった可能性があります。
代表的な投機筋であるヘッジFの円売りポジションの損益分岐点は、120日MA(移動平均線)が目安とされ、足下で157円半ばまで上昇してきました(図表5参照)。このため為替介入などをきっかけに、米ドル/円が120日MAの位置する157円半ばを大きく割れるようであれば、ヘッジFは損失拡大を回避するべく円売りポジションの処分に伴う円買い戻しに転換する可能性があるでしょう。
2026年6月の注目点=日銀利上げ、米ドル/円に大きく影響する可能性
ECBと日銀は利上げの予想=新議長初参加のFOMCは金利据え置きか
6月には、日米欧の金融政策発表が予定されており、これも米ドル/円に大きく影響する可能性があります。まず6月11日にECB(欧州中央銀行)、そして6月16日が日銀、6月17日がFRBという順番で金融政策が発表されます。ECBと日銀は利上げ、新たにFRB議長に就任したウォーシュ議長が初参加となるFOMC(米連邦公開市場委員会)は政策変更なしといったところが、現時点での基本的な見方でしょう。
このうちとくに6月16日の日銀会合については、利上げのタイミングに合わせて為替介入を行うことで円安是正を一気に進めるといったシナリオも一部で囁かれていることから、米ドル/円を大きく動かすきっかけになる可能性もあるのではないでしょうか。
6月の米ドル/円は152~161円で予想
円安阻止で日米の利害が一致しているとみられることなどから、160円以上の円安は自ずと限定的になると考えます。その上でとくに日本の当局の場合、円安阻止にとどまらず円安の是正や円高への反転を目指しているようにも見えることから、それが実現に向かった場合、円高が大きく広がる可能性もあるでしょう。以上を踏まえ、6月の米ドル/円は152~161円で予想します。
6月第1週(6月1日週)の米ドル/円は155~161円で予想
6月第1週は、5日の米5月雇用統計発表を筆頭に、注目度の高い米経済指標発表が多く予定されています。それらは総じて強い数字が予想されていることから本来なら米ドル買い要因となりそうです。ただし、日本の当局などの円安を容認しない方針は強いとみられます。円買い介入再開となった場合は、これまでのパターンと同様に、一日で5円前後と大きく円高に振れる可能性があるでしょう。以上を踏まえ、6月第1週の米ドル/円は155~161円で予想します。
