モメンタムはどのような相場で成立するのか
大発会では日経平均株価が史上8番目の上げ幅となる1,493円高を記録しましたが、2026年の株式市場は総じて堅調な上昇相場となっています。足元の物色の柱としては、防衛関連銘柄や、長期金利の上昇を背景にした銀行株などの金利上昇メリット銘柄が挙げられますが、とりわけAI半導体関連銘柄が相場をけん引する中心的な存在となっています。
こうした上昇銘柄を追随する投資スタイルは、一般に「順張り物色」と呼ばれます。米国の投資理論ではこれは「モメンタム(モメンタム効果)」として知られています。モメンタムとは、過去の一定期間に大きく上昇した銘柄の株価が、その後も上昇の勢いを維持しやすく、相対的に高いリターンが続く傾向を指します。言い換えれば、強い銘柄はしばらく強い動きを続けやすいという現象です。
本稿では、このモメンタムがどのような相場環境で起こりやすく、どのような条件のもとで持続するのかを理論的な観点から整理します。特に現在の相場をリードしているAI半導体関連銘柄に投資する際にも重要な考え方となります。
モメンタムとリバーサルの違い
モメンタムを理解するためには、対照的な現象であるリバーサル(逆張り)と比較すると分かりやすくなります。
リバーサルとは、過去に大きく下落した銘柄が、その後に反発し相対的に高いリターンを示す傾向を指します。実際の投資判断でも、この2つの見方は自然に現れます。株価が下がり続けている銘柄を見ると「まだ下がりそうだ」と感じる人も多い一方で、「そろそろ反発するのではないか」と考える人もいます。また上昇が続いている銘柄についても、「まだ上がりそうだ」と感じる見方はモメンタム期待であり、「上がり過ぎではないか」と考える見方はリバーサル期待といえます。
RSIやストキャスティクスなどのオシレーター系テクニカル指標は、こうした市場参加者の期待の偏りを数値として表したものといえます。つまりテクニカル分析で見られる「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」という概念は、モメンタム期待とリバーサル期待のバランスを視覚化したものと理解することができます。
理論から見るリバーサルの合理性
ファイナンス理論の観点から見ると、リバーサルは比較的理解しやすい現象です。
株価は理論的には将来利益(将来の1株当たり利益:EPS)と期待リターンの関係から説明できます。単純化すると次のように表現できます。
株価 = 将来の予想EPS ÷ 期待リターン
これは利益割引モデルの考え方を簡略化したものです。
将来の予想EPSが上昇すれば株価が上昇するという関係は直感的にも理解しやすいでしょう。
ここで、EPSが変化しないまま株価だけが上昇した場合を考えます。この場合、式の右辺が左辺の株価に合わせて大きくなる必要があります。そのためには分母である期待リターンが低下しなければなりません。
つまり株価が上昇すると、その銘柄の将来の期待リターンは低下することになります。これは「株価が上がるほど将来の上昇余地は小さくなる」という直感的な理解と一致します。
この意味では、株価上昇後にリターンが低くなるリバーサルの方が、理論とは整合しやすい現象といえます。
モメンタムが成立する条件
それではモメンタムは理論と整合しないのかというと、必ずしもそうではありません。
再び
株価 = 将来の予想EPS ÷ 期待リターン
の関係を考えます。
株価が上昇しても、それ以上のペースで将来の予想EPSが引き上げられる場合には、右辺分母の期待リターンは低下しません。この場合には株価上昇がさらに続くことが説明できます。
つまりモメンタム相場が持続するためには、「将来の予想EPSが事前の予想以上に引き上げられていくこと」が必要になります。
この点を考えると、モメンタム投資とは単に株価の勢いを追う投資ではありません。将来の業績予想がさらに上方修正される可能性を見極めながら投資することが重要になります。
ここで重要なのは、モメンタム投資を単なる経験則として捉えるのではなく、理論との整合性を確認しながら判断する科学的な投資手法として理解することです。
米AI半導体のリード企業であるエヌビディア[NVDA]の決算発表では、利益成長率が高水準であっても市場予想を上回らない場合、決算前の期待で上昇していた株価がその後伸び悩む場面が見られます。これはEPSの伸びが事前の期待程度ならばモメンタムが続きにくいことを示しています。
市場の期待によって株価がモメンタム的に上昇している局面では、その動きが理論的にも裏付けられているかを確認することが重要です。具体的には、将来の業績予想がさらに上方修正される可能性があるかどうかを見極めることで、モメンタム投資の有効性をより合理的に判断することができます。
