決算発表前後の株価に着目するEAR戦略とは
5月中旬にかけて、3月期決算企業の決算発表は本格化に向かいます。とりわけ4月下旬から月末にかけては、27日にアドバンテスト(6857)、28日に信越化学工業(4063)、そして30日には東京エレクトロン(8035)と、半導体関連を代表する主要企業の決算発表が相次ぎます。これらはいずれも市場への影響力が大きい銘柄であり、足元で注目度が高まっているAI半導体関連の需要動向や業績見通しを占ううえでも、投資家の関心が集まりやすい局面です。例年、決算発表シーズンが本格化するにつれて、市場の視線は個別企業の業績へとシフトしていく傾向があります。企業ごとの決算内容が良かったか、或いはそうでなかったかが株価に直接影響を与えるため、銘柄選別の重要性が一段と高まる局面でもあります。しかし今回は決算発表の内容そのものでなく、発表時の株価の動きに着目したEAR(イーエーアール:Earnings Announcement Return、決算発表時収益率)という戦略について紹介します。
EARは米国の研究を背景に発展してきたもので、非常にシンプルな手法です。「決算発表日を中心に、その前後1営業日を含めた合計3日間の株価騰落率を算出し、それが市場全体の騰落率を上回った銘柄に投資する」というものです。単純な手法ですが、米国ではパフォーマンスが良い戦略として知られています。本来、決算発表で投資家が注目するのは、企業が公表する利益の推移や業績見通しといった財務情報です。しかし、EARは決算内容の良し悪しには触れず、それらの情報を受けた株価の動きのみに着目する手法です。
なぜ株価の動きだけで投資が成り立つのか
なぜ、決算内容を直接見ずに株価の動きだけに着目する戦略が有効なのでしょうか。
ここでは、好決算銘柄で決算発表前後に株価が上昇する(EAR)銘柄と、決算が悪い銘柄であっても株価が上昇する(EAR)銘柄の2つに分けて解説します。
一般に、好決算銘柄は決算発表前後で株価が上昇すると考えられています。決算発表前には好決算への期待から株価が上昇し、発表後も実際の決算内容が評価されて株高になるという流れです。好決算銘柄であっても、発表前後で株価が下落するケースも見られます。これは、事前に株価が好決算期待を織り込んでおり、決算発表をきっかけに材料出尽くしとなる場合です。また、決算自体は良好であっても、市場の期待に届かなかったと評価される場合には、発表後に株価が下落することもあります。
好決算発表前後に株価が上昇する銘柄は、市場で事前に織り込まれていた期待を上回る決算を示すケースです。すなわち、「市場の想定以上に業績が良い」、言い換えれば想定を上回る業績モメンタムが確認された銘柄です。市場想定よりも業績モメンタムが強い銘柄は、市場で考えられている以上に経営環境が良好である可能性が高く、その結果として将来的に業績が市場予想を上回って伸びやすい傾向があります。これが中長期的な株価上昇につながると考えられます。
これが、好決算銘柄におけるEAR戦略の背景です。
では、「決算が悪い銘柄であっても株価が上昇する(EAR)銘柄」のケースはどのように考えられるでしょうか。こうした銘柄は、事前に決算の悪化が過度に株価に織り込まれている場合が多く、決算発表を契機に材料出尽くしとなって株価が上昇するケースです。このような銘柄は、企業の実態に対して売られ過ぎとなっている傾向があり、その後は中期的にも見直し買いを背景に株価が上昇する余地があると考えられます。これが、決算発表前後で株価が上昇したという条件のみで銘柄を選別するEAR戦略が有効とされる理由です。
EAR戦略の実践方法
それでは、具体的にEAR戦略をどのように実践すべきか解説します。
本戦略は株価の動きのみに着目する手法であるため、保守的に条件を設定することが有効です。
基本となる「決算発表日を挟んだ前後3日間の株価の動きを見る」という点は変わりませんが、この3日間すべてにおいて、市場全体、例えば日経平均株価と比較して上昇している銘柄に限定するという条件を設けます。すなわち、3日間のうち1日でも日経平均株価の騰落率を下回る日があれば、その銘柄は対象から除外します。
EAR戦略は株価の動きのみを見る点が大きな特徴であるため、この点を変えてしまうと戦略の本来の有効性が損なわれる可能性があります。そのため、決算発表日前後を含めた3日間の各日の株価の動きを個別に確認するというシンプルな方法が重要です。
決算発表が本格化する局面において、投資判断の参考として活用してみてください。
