金利差で説明できない円安はヘッジFの大規模な円買いポジション処分が一因か

米ドル/円は、2025年4月の139円を安値として、その後上昇傾向が続いた。ただ、それは日米金利差(米ドル優位・円劣位)の縮小傾向が続く中で起こったものだった(図表1参照)。日米金利差の変化でほとんど説明できない米ドル高・円安をもたらしたのは何だったのか。

【図表1】米ドル/円と日米金利差(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2025年5月からの米ドル高・円安と基本的に連動したのは、ヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円買いポジション縮小だった。このポジションは、2025年4月末には約18万枚という空前規模の円買い越し(米ドル売り越し)となっていた。

記録的に大規模な円買いポジションが縮小に向かう動きは、米ドル高・円安に沿って展開した(図表2参照)。その意味では、日米金利差の変化でほとんど説明できない2025年5月以降の米ドル高・円安をもたらした米ドル買い・円売りの一角は、ヘッジFの円買いポジション処分の可能性があっただろう。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

CFTC統計の投機筋の円買いポジションは、2025年12月にかけてほぼ消滅する。ちょうどこの頃から米ドル高・円安も足踏みが目立つようになった。その意味では、米ドル高・円安は、やはりヘッジFの円買いポジション処分に伴う円売りの影響が大きかった可能性を感じさせる。ここからさらに米ドル高・円安が広がるかは、すでに円買いポジションの処分が一段落したヘッジFが新たに円売りポジション拡大に動くかが、ひとつの鍵になるのではないか。

2024年「歴史的円安」では円売り主導=ヘッジF、トランプ政権で円買いに大転換

ヘッジFは、2024年7月にかけて約38年ぶりとなる161円という「歴史的円安」を記録した局面では、円売りの主導役を演じた可能性があった。CFTC統計の投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)は、2024年7月には過去最高にほぼ肩を並べる18万枚まで拡大した(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ところが、その後は一転して円売りに慎重になった。そして2026年1月にトランプ政権が始まると、それまでとは逆に円買いの積極化に向かった。すでに見てきたように、2025年4月には円買い越し(米ドル売り越し)が約18万枚という空前の規模に拡大した。

このような円買いの積極化は、日米金利差から見ると不合理なものだった。一時5%以上に拡大していた日米政策金利差はその後縮小したものの、それでもなお米ドル優位・円劣位には変わりなかったからだ。

金利差から不合理な円買いはトランプ政権の通貨政策の影響か=ヘッジF

2008年の「リーマン・ショック」後に米国もゼロ金利政策を行うと、日米政策金利差はほぼゼロの状況がかなり長い間続くところとなった。そうした中でも、CFTC統計の投機筋の円買い越し最高は、2016年の7万枚にとどまっていた(図表4参照)。その2016年と比べると、2025年の日米金利差はなお大幅な米ドル優位・円劣位だったにもかかわらず、金利差から見ると不利な円の買い越しが空前規模の18万枚近くまで拡大していた。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この金利差から見ると不合理なヘッジFの円買い積極化は、大幅な円高の「確信」なしでは考えにくいだろう。トランプ大統領はかつて、「強い米ドルが良いが、米ドル安の方が儲かる」と述べるなど、貿易相手国に通貨高を要求する姿勢が目立った。このため、金利差から見ると不合理なヘッジFの円買い戦略は、トランプ政権の通貨政策の影響が大きかったということではないか。

そうであるなら、ヘッジFがこれまでから一変し円売り拡大に動くかは、トランプ政権の通貨政策が変わらなければ微妙ということになるだろう。ではヘッジFが円売り拡大に慎重な姿勢を続けた場合、円安も限定的な動きにとどまるかが次の焦点になるだろう。